新しい仕入先を探すとき、「とりあえず展示会に行きましょう」で終わっていないでしょうか。
私は、それだともったいないと思います。新規開拓は、どこで探し、書類で絞り、訪問で何を見て、採用か見送りかを決める。そして、なぜその相手を選ぶのかを、上司や現場に自分の言葉で説明できる。
ここまでが一続きです。この動き方で、結果がずいぶん変わります。
もう一つ、大事な視点があります。今は、良い相手ほどこちらを客として選んでいる、という場面が増えました。作る側の立場が強い局面では、買い手も「選ばれる側」になります。
この記事は、相手を見極める目と、良い相手に選ばれる準備。この二つをそろえて追っていきます。
こんな方におすすめの記事です。
・新しい仕入先を、どこから探せばいいのか分からない
・訪問しても、何を見て判断すればいいのかが定まらない
・採用か見送りかの理由を、上司にうまく説明できない
どこで探すか。チャネルに優先順位をつける
探し方はたくさんあります。社内や既存取引先の紹介、商社、展示会や商談会、Web検索、公的機関のマッチング。ただ、全部を同じ熱量で追うと時間が足りません。
まず勧めたいのは、確度と手間で優先順位をつけることです。私の実感では、確度が高く手間が軽い順に、社内や既存取引先の紹介、次に商社を使い倒す、そのあと展示会やWeb、という並びが動きやすいと思います。
良い相手ほど、ふだん付き合いやすい買い手のところへ集まるものです。ここで早くも「選ばれる側」の話が顔を出します。
商社は、仲介手数料の分だけ働いてくれるかで見ます。現地工場への同行、与信情報の先出し、品質トラブル時の窓口。こうした役割を具体的に頼めるかどうかが、置いておく値打ちの分かれ目です。
展示会は入口として便利ですが、立派なブースや営業の勢いで相手を決めないことです。見た目は実力を証明しません。
訪問に進める相手を絞る。書類での一次スクリーニング

気になる相手が見つかっても、いきなり全部は訪問できません。時間もお金もかかるので、その前に書類で絞ります。
何を見るか。航空機部品の品質保証を長くやってきた方は、四つの観点を挙げています。
品質保証(最低限の認証を持っているか)、製造(設備や技術者の腕)、生産(納期を守れる生産力と外注の管理)、財務(決算書を数年分、与信、つまり相手の支払い能力の見立てとあわせて)。認証は「持っています」の口頭で信じず、発行機関と登録番号、そして認証の範囲が今回の品目や工程を含んでいるかまで確かめます。
よくある例として、最安値の相手に飛びついて、初回は問題なくても半年後に不良が増え、結局は選び直しになる。これはよく聞く話です。
価格優先で品質が落ちる、相手が数年先も安定して作り続けられるかという視点が抜ける、文化が合わない。つまずきはこの三つです。安いには安いなりの理由が隠れていないか、書類の段階で一度立ち止まります。
初回訪問で見る現場サイン

ここが、この記事で一番お伝えしたい部分です。
書類がそろっていても、実力は現場に出ます。見るべきサインの重みは業種で変わりますが、考え方は共通です。
工場見学を「きれいでした」「安そうでした」の感想で終わらせないことです。プロは、現場の状態が原価にどう跳ね返るかで見ています。
仕掛品の山を「活気がある」と喜ぶのは危ないです。仕掛品は工程のつまりや計画の乱れ、売上に変わらないまま資金をふさぐ在庫でもあるのです。
整理整頓や5Sも、掃除ではなく、無駄な原価が乗っていないかの目で見ると、景色が変わります。
見るサインは具体的です。工具や計器が定位置にあって、すぐ取り出せて、正常の範囲が示されているか。掲示物の目標や日付が最新か。古い数字が貼りっぱなしなら、管理が形だけのサインかもしれません。
会議室で聞いた数字は、現場の物と突き合わせます。返品や不良が一定の割合を超えて続くなら、たまたまではなく仕組みの問題だと見ることもできるでしょう。
それから、記録。訪問を事前に伝えると、その日だけ整える工場もあります。だから、日々の不具合調査や改善の記録という「ふだんの姿」を見ます。
訪問の作法も大事です。大勢で押しかけない、対等に意識をすり合わせる。
監査は買う側と売る側の意識合わせです。この作法こそ、相手に感じのいい客だと思わせる、選ばれる準備の芽でもあります。
書類は申し分ないのに、現場では掲示物の日付が数か月前で止まり、仕掛品が積み上がっているのに稼働率だけは高く報告されていた。こうしたサインが重なって、見送りに切り替えたことがあります。
上司には「認証はそろっているが、日々の管理が回っていない証拠が現場にいくつもあった」と、事実を並べて伝えます。実際にいった人の発言は説得力があります。
第一印象や情に流されず、事実で見る。ここが現場の肝です。
採否をどう決めるか、そして選ばれる側になる

訪問まで終えたら、サンプル製作を依頼するかどうかを決めます。大事なのは、書類で見たことと現場で見たことを、別々のメモのまま放置しないことです。
二つを突き合わせて、なぜ次のステップに進めるのか、なぜ見送るのかを、自分の言葉にします。上司や現場に説明できる形になっていれば、その判断はだいたい正しいです。
採用見送りを考えるサインもあります。基本的なミスを繰り返す、記録が出てこない、承認なしに生産を別の場所へ移す、直すと言って直せない。取引開始から3か月から6か月で品質が落ちる例もよくあることから、品質の一貫性は管理するものです。
最初の小さな違和感を見逃すと、それが普通になってしまう。サンプルが良いから即採用、も危ういです。
その品質が一人の熟練者に頼っていないか、見ておきましょう。
さて、記事の最初に触れた、選ばれる側になる話に戻りましょう。良い相手は、こちらを客として選んでいる。売り手優位の強さは品目や時期で変わり、汎用品が余っている局面なら買い手が強いこともあるでしょう。それでも、良い相手を長く確保したいなら、選ばれる準備は早く始めた人ほど後で楽になります。
こんな話を聞いたことがあります。供給が逼迫したある会社が、通常の何倍もの割増を払うと申し出た。それでも断られた。
お金を積めば優先してもらえる、というわけではないのです。相手は、こちらが思うより多くの客を選べる立場にいます。
では、選ばれる客は何が違うのでしょうか。支払いが速く、約束を守る。承認や受け入れがもたつかず、取引がしやすい。
求めることを最初にはっきり伝え、仕様を後出しにしない。社内で条件がぶれない。逆に、面倒な客は、いざ品薄になると真っ先に外されます。
ここで、よくある誤解も一つ。選ばれる客になるのは、「言いなりの甘い客」になることではありません。要求は高いまま、態度は毅然と、それでいて親切に。
最後に、少し勇気のいる話を。相手を評価する前に、一度、自分の会社を見てみることです。支払いは遅くないか、内示はころころ変わっていないか、無理な仕様変更を押し付けていないか。
私は、新規の相手に「うちの受け入れや承認で、無駄や面倒があれば言ってください」と聞くようにしています。この一言で、相手は本音を出しやすくなります。
まとめ
新規開拓は、探して選ぶだけの片側の作業ではありません。
相手を見極める目と、良い相手に選ばれる準備。この二つを最初から持っておくだけで、次の一歩が変わります。
次の開拓では、確度の高いチャネルから当たり、現場のサインを見て、書類と現場を突き合わせて採否を決める。そのうえで、選ばれる準備を一つ、始めてみてください。
新規開拓の判断に迷うのは、調達の土台がまだ手の内に入っていないからかもしれません。
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