調達コストダウン手法4選|単純な価格交渉だけでは頭打ちになる

調達のコストダウン手法4つが、それぞれ別の相手を動かす手であることを示した図

上司からコストダウンを求められる。やれるのは値下げのお願いだけ。私の場合、何度お願いしても数%で止まりました。

自社の状況が厳しいと正直に伝えたこともあります。返ってきたのは「難しいですねぇ」の一言だけ。こちらの事情は、価格を動かす材料にはならないんですね。

頭打ちになるのは、交渉が下手だからではありません。調達のコストダウンの手は大きく分けて4つあり、そのうち自分ひとりで始められるのが1つだけだからです。

こんな方におすすめの記事です。
・コストダウンを求められるが、やれるのは値下げのお願いだけ
・何度交渉しても数%で止まり、先が伸びない
・交渉以外に何ができるのか知らない

この記事でわかること
・コストダウンの手法4つと、それぞれが誰を動かす手か
・4つのうち、自分ひとりで始められるのはどれか
・明日、誰に何を頼めばよいか

目次

4つの手法は「誰を動かすか」で分かれています

手法動かす相手自分ひとりで始められるか価格が下がるまでに待つもの
単純な価格交渉サプライヤの
営業担当
次の発注
まとめ発注自社の
生産管理部門
×自社の在庫を
増やす合意
サプライヤの
生産性改善
サプライヤの
製造現場
×作り方の変更
仕様を変える自社の設計×図面が
書き換わる機会

この並びは効果の大きさの順番ではありません。単純な価格交渉以外の3つは動かす相手がいます。違いは、価格の手前にある別の判断。

1つめ 単純な価格交渉

机を挟んで書類を前に価格の話をしている買い手とサプライヤの営業担当

動かす相手はサプライヤの営業担当。価格はこの人との話し合いで決まるので、自分ひとりで始められます。

作るのにかかっている費用は1円も減らず、相手の利益がこちらへ移るだけ。移せる量は決まっているので、何度やっても同じところで止まります。

気をつけたいのは、相場からかけ離れて低い価格を不当に決めることです。取適法(旧下請法)が買いたたきとして禁じています。2026年1月、旧下請法から名前が変わりました。あわせて、サプライヤから価格の協議を求められたのに応じず、説明もしないまま一方的に決める行為も禁じられています。

この手法が有効でないのは、サプライヤが「この発注先は自社しかない」と見ている場面。競合がいると思っていなければ、価格は動きません。

2つめ まとめ発注

倉庫の天井近くまで積み上がったダンボール箱の在庫

動かす相手は自社の生産管理部門。まとめてよいかを決めるのは生産管理や上司なので、自分ひとりでは始められません。

バラバラの発注を、時期や拠点をまたいでまとめ、1回の数量を大きくします。減るのはサプライヤの費用。段取り替えや輸送の回数が減り、1個あたりの負担が軽くなります。

在庫の負担と比べて決める

つまずくのは、自社の在庫が増えるから。置き場所と、在庫に化けて置いたままになる資金と、保証期限が過ぎて使い切れずに捨てる危険です。単価が下がる金額と、自社で在庫を抱える負担を比較しないと通りません。使う量の見通しと置き場所は、先に製造部門へ確認しておきます。

使えないのは、使う量が読めない品目と設計が変わりそうな品目。まとめた分が自社の在庫のまま残ります。

3つめ サプライヤの生産性改善

稼働している工場の製造ラインで機械を扱っている作業者

動かす相手はサプライヤの製造現場。工場を見せてもらえるかどうかも、減った費用を価格へ返してくれるかどうかも、決めるのはサプライヤです。だから自分ひとりでは始められません。

サプライヤの作り方の無駄を一緒に見て、作るのにかかっている費用そのものを減らす手。無駄な工程や作業を省き、材料待ちで手が止まる時間や、作りすぎた在庫にかかる費用を減らします。

断られにくい入り方

サプライヤの製造現場は、粗探しに来たのか、一緒に良くしに来たのか、そこを見ていると思ったほうがいいです。「うちの発注の仕方が、そちらのラインに無駄を作っていないか」。この入り方なら断られにくい。

使えないのは、発注量が小さくて、作り方を変える手間に見合わない品目です。

4つめ 仕様を変える

動かす相手は自社の設計。図面を変えるかどうかを決めるのは設計なので、自分ひとりでは始められません。

買うモノ自体を変えます。板を薄くする、等級を下げる、部品を共通にする。必要な機能を落とさずに費用を下げる道を探す取り組みが、VA/VEです。減るのはサプライヤの費用で、材料の量と加工の手間です。

私は設計に「仕様を変えてください」と持って行って、断られたことがあります。理由を聞くと、昔その部分で不具合が出て、それ以来この寸法にしている、と。当時の担当者はもういません。変えれば評価は最初からやり直しです。不具合が出たときに責任を問われるのも設計。安くなりますという話は、設計にとって自分の仕事が増えるという話でしかありませんでした。

設計が困っていることを入口に

だから、コストが下がりますとは言いません。設計が困っていることを入口にする。

注意すべきは、サプライヤと一緒に作り込んだ仕様。安くなっても、供給先がそこ1社だけになります。

引き出しの数は、動かせる相手の数で決まります

コストダウンを出さないと評価されないのに、出し方が自分が動くだけの単価の交渉1つしかない。このまま値切り屋で終わるのではないか。

それは腕前の問題ではなく、コストダウンの相談を直接持っていける先が社内にないという問題です。

引き出しを増やすとは、手法の名前を覚えることではありません。誰に何を頼めば動くかを覚えることです。

今回の4つは、動かす相手で見た例です。打ち手そのものをもっと細かく分けた見方もあります。

明日やることは1つ。単純な価格交渉以外から1つ選んで、誰に何を頼むかを1行で書き出してみてください。

単純な価格交渉でコストダウンできる量は決まっています。その決まった量を、取り切れているでしょうか。資材調達コスト削減交渉術では、価格の見方から交渉の組み立てまでを、現場で使う順に扱います。明日の打ち合わせから、根拠を持って話せるようになります。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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