苦労して評価基準を作って、評価表を作って配りました。半年後、誰も見ていません。
点数は付いているのに、発注先の決め方は前と変わっていない。
原因は項目の選び方でも配点の精度でもなく、決める順序でした。評価表から作ると、評価は動きません。
こんな方におすすめの記事です。
・評価表は作ったものの、誰も見ていない方
・ランクを付けた後、取引先に何を伝えればいいか分からない方
・評価項目が多すぎて、どれを残すか決められない方
評価表から作るから、評価しっぱなしになる
項目と配点から作り始めると、点を付けること自体が仕事になります。点が付いた後に誰が何をするのかは、決まっていない。
私だけの失敗ではないようです。評価の目的が担当者まで届かないまま、管理部門からのやらされ仕事で評価をつけたものの、放置となる企業が多くあります。
順序を逆にします。扱うのは次の3つです。
- 評価のランクごとに、どういう状態でいてほしいかを決める
- その状態を判断するのに必要な情報だけを、評価項目にする
- 続く形にして、相手に返す
ステップ1 評価のランクごとに、どういう状態でいてほしいかを決める

A・B・C・Dに、望む状態を一行ずつ書いてみる
評価表を開く前に、紙を1枚用意してください。A・B・C・Dの4つのランクに、「この取引先にはどういう状態でいてほしいか」を一行ずつ書きます。
ここで書くのは自分が取る行動ではありません。相手がどうなっていてほしいか、その状態だけです。
たとえばAなら、困りごとを早い段階で相談してもらえている。Bなら、あと何が満たされればAなのかを、こちらと相手が同じ言葉で共有できている。Cなら、直してほしいことが一つに絞られていて、相手もそれを分かっている。Dなら、引き継ぎに必要な図面や金型の扱いが、いつでも話し合える状態になっている。
私はここでつまずきました。下位に落ちた取引先に何を伝えればいいのか分からず、その年は何も言わないまま終わった。評価表には「要改善」と印字されていた。でも何を改善してほしいのかは、私の中にも無かったんです。
状態が決まると、次の一手はほとんど自動的に決まる
望む状態が言葉になると、こちらが何をするかは後から付いてきます。
Aの相手には、発注を寄せ、次の新規案件に呼ぶ。Bには上がる条件を伝える。Cには絞った一つを名指しで求める。Dには最低限の改善を持ちかけ、それにも応じてもらえないなら代替先の準備を始める。
ランク別のアクション表を先に作らなくても、状態のほうから出てきました。
状態に書き直すと「困りごとを早い段階で相談してもらえている」になりました。そこで初めて、いまそのランクに置いている取引先が本当にそうなっているのかを、一度も確かめていないことに気づきました。ランクは毎年付けていたのに、望んだ状態になっているかどうかは見ていなかったんです。
区分は4つでも、A・B・C・Dという呼び方でなくても構いません。ざっくりと、戦略的に付き合う、安いから付き合う、取引停止の対象といった目的別のラベルで分けてもかまいません。
ステップ2 その状態を判断するのに必要な情報だけを、評価項目にする

評価表は、会社ごとに重視する点が異なりますが、決め方の例をお話しします。
出発点はQCD(品質・価格・納期)でしょう。ただし完成形ではない。
技術力・対応・経営などの追加の着眼点で整理します。どこまで広げるかは、ステップ1の状態を判断するのに要るかどうかです。
候補の項目それぞれに、2つの問いを当ててください。
- この項目が下がったとき、どのランクのありたい状態が崩れるか
- 崩れたとき、自分は何をするか
たとえば「相談への返答の速さ」。下がると、Aに書いた「困りごとを早い段階で相談してもらえている」が崩れます。崩れたら相談の持ちかけ先を変える。両方に答えが出たので残します。
一方、認証を持っているかどうかは評価表でよく見かける項目ですが、これが崩れたとき自分が何をするのかを答えられないなら、合ってもなくてもよい評価項目かもしれません。落とす候補になります。
項目数の上限は、多くても12ほど。それを超えると集計に時間を取られて、中身を読む余力のほうが先に無くなります。
数字で計測できないものは、無理に点数へ変えず、事実の記述として残します。点数と記述は役割が違います。
点数は取引先を並べ替えてランクを決めるために使い、記述はステップ3で相手に返すときの会話の材料にする。無理に点数へ変えると、並べ替えの精度も会話の手がかりも両方を失います。
点数をつけられる側も、いつの時点で数えるかで数字は変わります。同じ会社が数え直したら三通りとも違った、という報告もあるほどです。ただ、定義をそろえたところで、何を動かすかが決まっていなければ同じこと。
点の付け方を先に決めておくべきだ、という考え方もあります。そのとおりです。案件ごとに配点を変えていたら、直近の印象で点が動いてしまう。
ただ、それは「いつ配点を決めるか」の話です。ここで扱っているのは「何を項目にするか」なので、ぶつかりません。項目を目的から選び、そのうえで配点は評価を始める前に固定しておけばよいことになります。
配点の重みとランクの区切り方は、会社ごとに重視している点で変わります。ここから先は、自社の方針を見ながら詰めていく番になります。
ステップ3 続く形にして、相手に返す

どんなに良い評価表でも、続かなければ無いのと同じです。続けるコツは、全部を同じ手間でやろうとしないこと。製造委託先の評価では、数カ月ごとに数字を見る軽いレビューと、年に一度の正式な評価に分けていました。毎回きちんとやろうとすると、たいてい止まります。
ただし、目的を決めないまま手間だけ減らすのは逆効果です。「項目を絞り簡素化しました」「評価回数を削減しました」という報告が出てきます。減らすこと自体は正しい。減らしていい項目は、点数が悪くても事態が何も動かない項目です。
返さない評価は、相手にとって存在しないことと一緒です。また、伝える場が儀礼的なやりとりで終わり、実効性がないのもよくある話です。
防ぐには、ステップ1のCに書いた「直してほしいこと一つ」をその場で名指しする。ステップ2で点数にせず残した事実の記述が、ここで手がかりになります。そのうえで、いつまでに何をするかまで一緒に決めてしまう。
評価結果を根拠に交渉の場へ持ち込んだとき、相手の出方が変わりました。感覚で「おたくは納期が悪い」と言ったときに返ってくるのは言い訳です。記録を並べて示すと、遅れの原因の話が始まる。その差でした。
まとめ
- 評価のランクごとに、どういう状態でいてほしいかを決める
- その状態を判断するのに必要な情報だけを、評価項目にする
- 続く形にして、相手に返す
明日やることは一つです。紙を1枚出して、A・B・C・Dそれぞれに望む状態を一行ずつ書く。すでに表がある方は、各項目に2つの問いを当てるところから。
この一行があると、「その評価は何のためにやっているのか」という疑問が起こったときに、取引先にどうあってほしいかで答えられます。
評価とは、取引先に成績を付ける作業ではありません。自分たちが取引先にどうあってほしいかを、言葉にする作業です。
根拠を持って向き合えるようになると、次は「どう切り出すか」という壁が来ます。Udemy講座「資材調達コスト削減交渉術」で扱うのは、交渉前の準備、実際のやりとり、下げた条件を維持する仕組み。評価結果を手元に置いたまま何も言えずにいる状態から、こちらから話を始められるようになります。
