総務や経理と兼任で購買を任され、引き継ぎも手順書もないまま、これで合っているのか確かめる相手もなく発注を続けている方へ書きます。
全部はやらなくて大丈夫です。最初にやるのは仕組みを作ることよりも、今どこにいくら払っているかを出すこと。そのあとで発注の記録を1か所に集め、相見積もりを取れる相手を1社増やす。
こんな方におすすめの記事です。
・兼任で購買を任されたが、何から手を付ければよいか分からない方
・出てくるのが大手向けの仕組みばかりで、ひとりでは回せない方
・高く買っている気はするが、全部を見直す時間がない方
大手のやり方が回らないのは、人数の前提が違うから
中堅企業以上なら専任の購買担当者がいますが、規模が小さければ、他の仕事と兼任で購買を持つ形になります。
大手企業の仕組みは、品目ごとに担当を分け、サプライヤを評価し、原価の内訳まで作り込みます。人数がいることが前提なので、この水準でひとりですべて抱え込むと止まります。
これから挙げる3つは、担当者が自分の手で始められる範囲に収めました。1つめで見直す品目が決まり、2つめでその品目をいくらで買っているかが残り、3つめでその金額を外からの見積もりと比べます。
1つめ どこにいくら払っているかを出す

発注システムがなければ、元になる数字は会計ソフトから取ります。サプライヤごとの支払いがまとまっている帳票で、仕入先元帳や買掛金元帳と呼ばれます。
直近1年ぶんを出してください。現金やカードで都度払っているものは載らないことがあるので、心当たりがあれば通帳の記録も見ます。会計ソフトを触れないなら、経理へ直近1年の仕入先別の支払額を出してほしいと頼みます。
まず、サプライヤごとに金額の大きい順で並べます。次に、上位の数社への支払いを品目に分け、金額の大きいものから選びます。品目名で全部を並べ替える作業は、当面やらなくて大丈夫。同じものが型番と通称で二重に入っていたりして、そろえるだけで何日もかかります。
ただし、金額の大きい順で選ぶと、対象から外れてしまう品目があります。
金額は小さいのに、切らすと生産や出荷が止まるものです。認証を取り直せない部材、その業者しか作っていない特注品。会計ソフトの数字からは出てきません。
製造の現場に長くいる人へ、2つ聞いてください。これまでに入荷が遅れて、ラインが止まりかけたものはあるか。明日もし切らしたら、ホームセンターや他の業者から今日中に買えるものか。ここで名前が挙がったものは、金額が小さくても選んだ品目に加えます。
2つめ 発注の記録を1か所に集める

集めるのは、1つめで選んだ品目の発注だけで足ります。全部を記録しようとすると続きません。仕入先元帳には支払った金額が残りますが、そのとき単価がいくらだったかまでは残らないことが多いです。
記録が無いと、こうなります。
値上げの連絡が来て、前回は特別な価格でしたので今回から通常の単価になります、と言われる。前回いくらだったかが手元になければ、それが本当かどうかを確かめられません。
時間のかかる過去の記録は集め直さなくて大丈夫。
今日からの注文書の控えと発注のメールを、自分以外も見られる1か所に保存し、注文日・サプライヤ名・品目・数量・単価・金額を1つの一覧表に書いてください。過去の注文書までさかのぼって全部そろえようとすると、そこで力尽きます。
一覧表はExcelでも表計算のクラウドサービスでも構いませんが、置き場所は自分のパソコンの中ではなく、他の人も見られる共有フォルダにします。
私が買う側で困った話をします。長く付き合っていたサプライヤの窓口が、営業と生産管理を兼任している方ひとりでした。その方が休んだ週、見積が返ってこず、こちらの発注が止まりました。
前回いくらで見積もったのかが、その方の手元の紙にしか残っていなかったからです。社内の誰も代わりに答えられませんでした。
これは相手の会社の話ですが、同じことは自分の会社でも起きます。何をいくらで買ったかが担当者ひとりの手元にしかないなら、その人が休んだ日に発注が止まります。
3つめ 相見積もりを取れる相手を1社増やす

相見積もりは、同じ品目を同じ条件で比べるものです。2つめの一覧表に単価が載った品目から1つ選び、その品目を作れるサプライヤをもう1社探してください。比べる相手は、一覧表に残した前回の単価です。
最初の1品目は、梱包材や汎用の消耗品のように、変えても製造の中身に響かないものから始めると通しやすいです。図面のある部品でいきなり2社目を探すと、品質保証や製造から耐久試験のやり直しを求められ、そこで止まります。購買はコストで評価され、品質保証と製造は不良を出さないことで評価されるので、同じ話でも見ている先が違います。
これは発注そのものを2社に分ける話ではありません。量を分ければ1社あたりの数が減るので、どちらの単価も上がることがあります。それに、全部を任せてくれる客と、あちこちに分散させる客とでは、品薄のときに回してもらえる順番が違います。だからこの段階は、見積もりをもらえる関係を作るところまで。実際にどちらへ発注するかは、社内で慎重に協議して決めます。
2社目の見積もりは、金額が大きく違わないことのほうが多いです。それでも取る意味はあります。次に値上げの連絡が来たとき、その品目を作れる会社が他にもあると知っている状態で話ができるからです。
効率化の本命はシステム。入れる前に3つを終えておく
少人数で購買を回し続けるなら、いずれは購買管理システムで効率化するのが本筋です。2つめで手作業で作った一覧表は、システムで作れば大きな効率化になります。発注書の作成も、単価の履歴も、納期の管理も1つの画面にまとまります。
引っかかるところは2つあります。1つは、今どこにいくら払っていて、何をいくらで買っているかが手元に無いと、自社の規模に合うシステムを選べないこと。もう1つは、会計や生産管理のシステムが既にあるなら、品目コードの体系を先にそろえておかないと、あとから両方のマスタを作り直すことになることです。3つの手は、この判断の材料にもなります。
経営者の方へ ひとりに任せるなら、仕組みは会社が用意する
ひとりに購買を任せている会社では、何をいくらで買ってきたか、なぜその価格になるのかのノウハウが、その人の手元だけにあることが多いです。担当者が辞めれば、以前の経緯が分からないまま、後任者は価格交渉をしなければなりません。これは担当者の努力では埋まりません。仕組みのほうを会社が用意します。
用意するものは3つあります。1つめは、購買管理システムです。契約の決裁は担当者ひとりでは通さず上司の目を通し、価格を決定した経緯をシステムに記録を残します。
2つめは、システムを入れる前でも作れる、発注の情報が購買へ集まる形です。他部署が業者へ直接電話して発注している状態だと、担当者は何が買われたかを請求書で知ることになり、価格を見る機会そのものがありません。
3つめは、担当者がどこまで自分で決めてよいかの線です。いくらまでの発注なら承認なしでよいか、どんなときに相見積もりを取るのか。この線が無いと、担当者は消耗品1つでも聞きに来ることになります。
まとめ
今週やることは1つです。直近1年の支払いを、サプライヤごとに金額の大きい順に並べてください。上位の数社が決まれば、次に見る品目も、記録を残す範囲も決まります。
3つを自分で進めていくと、これで合っているのか迷う場面は必ず出てきます。そのたびに調べ直す時間が、いちばん惜しい。配属1日目の教科書〜未経験から始める調達・購買の基礎〜では、価格の見方からサプライヤの選び方まで、現場で使う順に並べています。調べ直す時間を減らして、3つを進める時間へ回してください。
