通訳を挟むと消えるもの|言葉が通じない相手への伝え方

通訳を挟むと消えるもの、言葉が通じない相手への伝え方というタイトルと、大きな吹き出しの話し手から通訳を経て小さな吹き出しの聞き手へ矢印が伸びる図を並べたアイキャッチ画像

海外の取引先と、通訳を挟んだ打ち合わせで、こちらが2分話したのに、通訳は15秒で終わる。その場では全員がうなずいたのに、翌週出てくるものが違うんです。

消えているのは、なぜそれが要るのかという理由や、どれくらい急いでいるのかという度合いなのかな。

こんな方におすすめの記事です。
・通訳を挟むと打ち合わせが噛み合わない方
・その場では合意したのに、違うものが出てくる方
・英語ができないと海外の仕事は無理かと思う方

この記事でわかること
・通訳を挟むと最初に何が消えるのか
・消えないように渡す5つのやり方
・消えやすい3つの場面と、取り戻す聞き方
・英語は必須かへの答え

目次

通訳を挟むと、言葉は届いて理由と強さが消える

現代的なオフィスで、3人が机をはさんで打ち合わせをしている様子

海外に駐在していたころ、相手の提案を見送ると伝えたことがあります。理由を3つ、2分ほどかけて話しました。通訳は一文で終わり、相手は次の議題へ進みました。

こちらが挙げた理由は、相手から返ってきた言葉に一つも入っていませんでした。通訳の中で、何が欠落したかは分かりません。それが分かるのは、相手の返答です。こちらが出した条件や理由、こちらが求めた対応が、数字や日付を伴って返ってこないなら、もう一度こちらから確認します。

通訳の仕事は、言っていない情報を足さず、意味を省かず話者の意図を正しく伝えることです。ただ、直訳は会話のスピードや流れについていけないので、必然的に省略せざるを得ません。こちらの話は2通りの落ち方をします。

1つは、言葉にしなかったものが渡らないこと。なぜそれが要るのかも、どれくらい急いでいるのかも、話者の頭の中にあるあいだは通訳しようがありません。話者は、通訳の際に文意が省略されたと感じていても、実はそのことが暗黙の前提条件であったため、口から言葉として発されていない可能性があります。

もう1つは、言葉にしたものも、一度に長く通訳に渡すと欠落すること。1文が長くなるほど、通訳する側は聞き逃しや訳し違いを起こします

切れ目なく、話し続ける人がいます。日本語は結論が最後に来るので、途中では話の行き先が見えません。2分続けて話せば、残るのは最後に聞き取った結論のほうで、真ん中に話した、理由の部分が落ちます。

長く話すほど落ちるのは、外国語から日本語の方向でも起こりえます。相手が理由を3つ挙げても、こちらへは一文で届きます。

意味が消えないように渡す5つのやり方

木の机に広げた数字とグラフの資料を、複数の手が指しながら確かめている様子

1つめ。資料をベースに話す。数字と日付と条件と図を1枚にまとめます。紙に書いたものは通訳を通らずに相手の目へ届くからです。文字で残っていれば通訳する側が覚えずに済み、精度が上がります。

相手に配るのは当日でかまいませんが、通訳には事前に渡せればベストです。社内の通訳でも、外部の通訳でも、当日どこまで正確に伝わるかは事前に渡した資料しだいです。

2つめ。1文を短く切ります。1文が短ければ、通訳する側は話を整理しやすく、聞き逃しにくくなります。

3つめは、条件と例外を別の文に分けることです。同じ文に入れると1文が一気に長くなって、どちらかが相手に届きません。

4つめ。急ぐ度合いは、言葉にしないと渡りません。「なるべく早く」だけでは、こちらと相手が思い浮かべる期限がそろわないからです。現地のスタッフへ指示するときも同じで、その場で日付に言い直します。

問題の深刻さも、起きる結果まで言葉にしてください。「これは重い問題です」ではなく「これが直らないと来月の出荷が止まります」と言い換えます。

決まったことを声に出して確かめる

5つめ。会議を終える前に、決まったことをこちらから読み上げ、違うところを指摘してもらいます。相手に伝わっていない条件は、相手が自分の知っている範囲で補って理解します。その場は噛み合って見えるのに、翌週違うものが出てくるのはそのためです。

消えやすいのは、断りの理由と、怒っている理由と、金額の根拠

シャツ姿の男性が書類の入ったファイルを示し、向かいの女性が身を乗り出して聞いている様子

ここまではこちらが出す話し方。ここからは相手の言ったことを受け取る話です。この3つは、相手がなぜそう言っているのかが分からないと、こちらの受け取り方も次の対応も間違えます。

相手が長く話すほど、理由は省略されていきます。だから、聞きっぱなしにならず、適宜確認を入れます。根拠は数字で答えてもらう。どちらも短くすることで、通訳の途中で欠落しにくくなります。

断りの理由が消えると、関係の拒否に聞こえる

提案などを断る理由を3つ挙げても、通訳は「今回は難しいそうです。」で終わり、なぜ難しいのかという理由が欠落する場合があります。理由のない断りは、条件が合わなかったのではなく、こちらそのものを断られたように聞こえます。

「今回の提案そのものが難しいということでしょうか。それとも、いまの条件では難しいということでしょうか」。後者なら「どの条件が変われば可能になりますか」と続けます。

怒っている理由が消えると、機嫌が悪いだけに見える

相手が強い調子で長く話しているのに、通訳は「もう少し考えたいそうです」。何に怒っているかが分からないと、何を直せばよいか分からないままになります。

「いまのお話は、改善してほしいという要望でしょうか。それとも、取引の継続に関わる話でしょうか。どちらに近いですか」などと聞きます。

金額の根拠が消えると、ただ上げたいだけに見える

「材料費が上がったので3パーセント上げたい」が、「3パーセント上げたいそうです」になります。根拠が消えると、申し入れが駆け引きに見えます。

聞くのは3つです

聞くのは3つです。「上がった費目は何ですか」「その費目は、元の単価の何パーセントを占めますか」「その費目は何パーセント上がりましたか」。
紙に書いてもらえば、3パーセントの値上げに計算の裏づけがあるか確かめられます。

英語ができないと海外拠点の仕事は無理か

必須ではありません。相手の現地の言葉が英語とは限りませんし、正式な慎重さが必要な場では、英語が話せるとしても通訳を入れたほうが無難です。そして通訳を挟む場面では、英語ができる人でも同じことが起きます。

英語ができると変わるのは、意味が欠落したことに自分で気づけること、下手でも自分の口で話すことでこちらの感情や実感が相手に伝わることです。

気づけないぶんは、資料をベースに話すことと、相手への聞き返しで埋めます。聞き返すのは、認識のずれを減らす作業です。

なお、通訳の質は非常に重要です。話者の含意や意図をくみ取れるか、また、関係業界の基礎知識が頭に入っているか。通訳の選定次第で、打ち合わせの進み方は大きく変わります。

まとめ

次の打ち合わせの前に、数字と日付と条件と図を1枚の紙に書いて、通訳に事前に渡してください。

そして会議の最後に、まとめを行い、決まったことをこちらから読み上げてください。相手に伝わっていないもの、認識されていないものは、この読み上げで見つかります

その紙に、どの数字とどの日付を選ぶかが決まらないのは、発注や納期を決めるときに何を確かめるのかが、まだ手の内に入っていないからかもしれません。「配属1日目の教科書」では、購買依頼から見積・発注・納期管理・支払までの流れと、品質と価格と納期のどれをどう見て決めるかを、現場で使う順に並べています。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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