購買管理の5原則とは?|教科書通りが崩れる現場の優先順位

購買管理の5原則の5つのうち、1つだけを前に出して優先することを示した図

購買管理の5原則は、研修で教わったとおりに覚えられます。でも、5つがきれいにそろう発注はほとんどありません。安いところへ変えれば品質が悪くなり、納期を詰めれば運賃(コスト)が上がる。

私も配属されたころは、自分の交渉が悪いのだと思っていました。そうではありません。5つを同時に最高の条件にすることは、そもそもできないからです。この記事では、ぶつかったときの優先順位の決め方と、そのあと自分が次に何を学べばいいかを書きます。

こんな方におすすめの記事です。
・購買管理の5原則を聞いたが、何を指すのか分からない
・5つは覚えたのに、現場ではどれも守れず、教わったとおりにならない
・次に何をどの順で学べばいいか分からない

この記事でわかること
・購買管理の5原則が指す5つと、QCDとの関係
・5つが同時には満たせない理由
・ぶつかったときの優先順位の決め方
・自分が次に学ぶものの決め方

目次

購買管理の5原則とは

購買管理の5原則とは、必要な品質・数量・納期を満たし、適切なサプライヤから、見合った価格で買うという購買の基本です。

  • 品質: 仕様どおりのものが届くこと
  • 数量: 必要な数が足りること
  • 納期: 使う日に間に合うこと
  • サプライヤ: 信頼できて安定供給できる相手を選ぶこと
  • 価格: 見合った値段で買うこと

よく聞くQCDは、このうちの3つです。品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の頭文字で、コストがここでいう価格にあたります。5原則は、そこへ数量とサプライヤを足したものです。

買う相手の呼び方は解説によって違い、「取引先」と書くものもあります。この記事では「サプライヤ」で通します。

そしてこの5つは、全部そろったかを確かめる項目ではありません。毎回どれを先にするかを決める項目です

なぜ5つは同時に満たせないのか

手袋をした手がノギスで金属部品の寸法を測っている受入検査の場面

1つを取りにいくと、その分の負担がどこかへ移ります。1つを優先すると別の条件が悪くなる関係を、トレードオフと呼びます

よくある失敗ですが、単価の安いサプライヤへ切り替えたあと、受入時の抜き取り検査(全数ではなく一部だけを調べる検査)で、寸法が公差から外れた品が見つかることがあります。全数の選別と再納入で日程が後ろへずれ、単価を下げて得るはずだった効果は、選別の工数と納入の遅れで消えます。安さを比べるときは、受入検査でどれだけ弾かれるかまで含めて見ることです。

納期を詰めてもらえば、サプライヤは段取りを組み替えるので、その分が単価に乗ります。まとめ買いで単価を下げれば、必要な数より多く在庫を抱えます。

どれも守れないのは、まだ仕事に慣れていないからでしょうか。

5つすべてを最高の条件にできないのは、あなたの段取りが悪いからではありません。条件どうしがぶつかるからです。

ぶつかったとき、どれを優先するか

夜の空港で貨物を積み込んでいる航空機と地上の作業車両

全部を守ろうとしないことです。今回の発注で優先するものを1つ決めます。決め方は、その条件を外した結果を次の発注で埋め合わせられるかどうかです。

原則外すと何が起きるか次の発注で埋め合わせられるか(例)
品質仕様と違うものが届く埋め合わせられない。選別と作り直しで日程と工数が出ていく。見落とせば客先へ流れる
数量必要な数と合わない足りない側は埋め合わせられない。多すぎた分は次の発注で減らせる
納期使う日に間に合わない埋め合わせられない場合がある。生産計画に余裕がないと客先への納品に影響がでる
サプライヤ買える相手がいなくなる埋め合わせられない。代わりが立ち上がるまで買えない
価格高く買う埋め合わせられる。次の発注で交渉し直せる

ぶつかったときは、埋め合わせのきかない側から先に決めます

埋め合わせのきかないものが2つ以上ぶつかったら、外した結果がどこまで影響するかで並べます。客先(自社の製品を買う相手)まで影響するもの、自社の生産が止まるもの、自社の生産に取りかかる前に吸収できるものの順です。どれに当たるかは品目で変わります。

私も一度、価格より納期を優先しました。担当していた部品の入荷が間に合わず、生産が止まりかけたときです。ふだんは船で運んでいたものを、社内で相談して航空便へ切り替えました。客先への納品を急いでおり、生産が止まった分を、船便が届いてからまとめて作る余裕がなかったからです。運賃は跳ね上がりましたが、便は間に合い、生産は止まらずに済みました。

決めた優先順位は先に伝える

決めた優先順位は、自分の中に置いたままにしないでください。「今回は納期を優先する」と先に伝えれば、相手は値段より先に日程を詰めてきます。逆に、納期の問題が起きている最中に価格の話を持ち出せば、納期は後回しになります。

ただし、優先順位も品目で変わります。どこでも同じものを買える消耗品なら、1社と取引できなくなっても翌日には別のサプライヤから買えます。図面を渡して作ってもらう専用品だと、代わりを立ち上げるのに数か月かかる。

ほかの4つを満たしやすい品目なら、価格が優先に来ます。先輩の判断が場面ごとに違って見えるのも、品目ごとに埋め合わせのきかないものが違うからです。

安い先へ替え続けた数年後

もう1つ、よくある失敗があります。毎年いちばん安いサプライヤへ切り替えていくと、数年後には見積を頼める相手が1社しか残っていない、ということが起こります。価格を埋め合わせられるのは今回の発注1件の話で、切り替えを続けたことまでは埋め合わせられません。

同じことは市場全体でも起きます。買い手が安さだけを追い続けた市場では、体力を失った売り手が抜けて数が減り、残ったサプライヤが値上げを通しやすくなります。

優先するものが決まると、次に学ぶものも決まる

資材の入った青いコンテナが並ぶ倉庫の棚で在庫を確認している作業者

同じ品目を担当していると、優先する項目は毎回似てきます。その顔ぶれが、次に学ぶものを決めます

納期や数量を優先する場面が多いなら、いつ発注をかけるか(発注点)と、どれだけ多めに持っておくか(安全在庫)の2つが重要になります。ここが決まっていないと、間に合わせるたびに追加運賃を払うことになります。

サプライヤを優先する場面が多いなら、まず自分がどこまで決められるのかを確かめてください。買う相手を自分で選べるのか、仕様が決まっているなどの制約で決まった先へ発注をかけるだけなのか。ここが「調達と購買の違い」と呼ばれる分野で、線の引き方は解説によって違います。

価格を優先する場面が多いなら、値段の中身の見方が重要です。単価だけを並べず、受入検査や運賃まで含めて比べます。

どれを優先する場面が多いかは、担当している品目を思い出せば分かります。そこから1つ選んでください。

まとめ

5原則は、全部そろったかを確かめるチェックリストというよりも、毎回どれを優先するかを決める道具です

明日、担当している品目を1つ選んでください。次の発注で条件がぶつかったとき何を優先するかを決めて、サプライヤに先に伝える。値段の相談から入るか日程の相談から入るかが変わります。

学ぶものは決まりました。あとは中身です。1つずつ実務で使える形にするのを独学でやりたくない方は、配属1日目の教科書をどうぞ。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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