相見積もりの取り方7ステップ:条件を揃えないと比較は無意味

3社に声をかけて、一番安い数字のところに発注する。相見積もりをそう理解していて、あとから「条件がバラバラで、そもそも比較になっていなかった」と気づいたことはありませんか。

こんな方におすすめ
・とりあえず数社に声をかけ、一番安いところを選ぶのが相見積もりだと思っている方
・見積を取っているのに、条件のズレで比較が成立せず損した経験のある方
・何社に頼むのが適正か、断り方のマナーが分からず迷っている方

この記事で得られること
・比較が成立する状態を作る「揃えるべき6項目」の考え方
・仕様を固めてから交渉に活かすまでの「取り方7ステップ」
・相見積もりの結果を価格交渉の材料に変える視点

損をしないコツは、安い社を探すことではありません。比較が成立する土俵を、先に作ることにあります。

目次

相見積もりの本来の目的は「安い社探し」ではない

相見積もり(複数の取引先から見積を取って比べること)の目的は、一番安い社を見つけることではありません。同じ条件で各社の値段を並べ、その値段が妥当かどうかを確かめることにあります。

なぜ「安い社探し」と言い切らないのか。公的なQ&Aでは、見積書は代金を決めるときの協議の材料だと位置づけられています。安いか高いかを当てる道具というより、価格の根拠を確かめる材料として取る。ここが出発点です。

私の経験では、こんな失敗がありました。同じ部品なのに、A社には1000個で、B社には500個で見積をお願いしてしまったのです。数量が倍も違えば単価は当然ずれます。並べてみても、どちらが得かさっぱり分かりませんでした。結局、両社に同じ数量で出し直してもらってから、ようやく値段の差が意味を持ちました。後から揃え直す手間を考えれば、最初から揃えておくほうが早いのです。

見積の条件がズレたまま比較して、判断を間違えてしまった経験があります。数量が違うと単価も変わるし、後払い条件でも価格に差が出る。後から気づくたびに、最初にちゃんと揃えておけば良かった、と後悔します。

そう感じるあなたの経験が、実は調達現場での標準的な失敗パターンです。最初から「同じ条件で並べる」という土俵を作っておく癖がつけば、こうした後悔は激減します。それが今回お伝えする7ステップの狙いです。

とはいえ、安さを見るなと言いたいわけではありません。安さを正しく評価するために、まず同じ条件で横に並べる。その順番が抜けると、せっかくの見積も比べものにならないのです。

条件を揃えないと比較は成立しない|揃える6項目

条件がズレた見積をいくら並べても、比較は成立しません。揃えるべきは、仕様、数量、代金や算定の仕方、納期、支払条件、受領場所の6項目です。この6つは、発注書に書くべき事項とほぼ重なります。

取適法(中小受託取引適正化法。発注側の不当な扱いから受注側を守る法律で、旧・下請代金支払遅延等防止法、いわゆる下請法を改称したもの)は、発注書の記載事項として、給付の内容、数量、代金の額、納期、支払期日、受領場所を定めています。法律が相見積もりを義務づけているわけではありません。ただ、取引を成立させるのに必要な情報がこの6つだ、と国が示しているわけです。同じ情報をRFQ(Request for Quotation。各社に同じ条件をそろえて渡す見積依頼書)にそろえれば、初めて横並びで比べられます。法律の話というより、比較の前提を確かめる目安として使えます。

ここで現場のつまずきを1つ。よくあるのが数量と支払条件のズレです。A社に1000個、B社に500個で頼めば、固定費の分け方が変わって単価は動きます。一方でA社へ60日後払い、B社へ即払いで頼むと、後払いの間の資金繰りのコスト、つまり金利の差がB社の値段に乗ります。それなのに「B社が高い」と判断してしまう。建値や単価方式(代金をいくらと決めるか、その算定の仕方)まで含めて、条件をそろえる必要があります。

揃えるべき6項目
  • 仕様(図面・材質・スペック)
  • 数量
  • 代金や算定方法
  • 納期
  • 支払条件
  • 受領場所

6項目を毎回そろえるのは手間に見えますよね。ふだんの現場では、依頼書に6項目の記入欄をあらかじめ作っておきます。一度ひな型にしてしまえば、次からは埋めるだけで済むのです。

相見積もりの取り方7ステップ

ひな型を手元に用意したら、ここからは7つの手順で進めます。仕様を固めることから始まり、最後は交渉や辞退の連絡まで通します。下のステップが全体の流れです。

仕様を固める

図面・材質・スペックを確定する

RFQで条件を統一する

6項目をそろえて依頼書にする

適正な社数を選ぶ

一般的な目安として3〜4社程度

依頼のマナー

同じ条件・同じ回答期限を明示する

見積を回収する

回答期限を管理し、不足項目を確認する

条件をそろえて比較する

数量・支払条件の差を補正して横並びにする

交渉に活かす/辞退の連絡

選ばなかった社へ辞退の連絡をする

社数の3〜4社は、あくまで一般的な目安です。案件の金額規模や調達リスクによっては、1〜2社で足りる場合もあれば、5社以上に広げたほうがよいケースもあります。自社の案件の重さに合わせて加減してください。

初級者がつまずきやすいのは、ステップ2とステップ6です。ステップ2では、RFQの段階で6項目をそろえておかないと、後工程がすべて崩れます。ステップ6の「補正」が、特に手が止まりやすいところです。例えば、数量が違う社どうしは、総額のままではなく1個あたりの単価に直してから並べる。支払条件が違う社どうしは、後払いの期間に応じた金利分を単価に乗せ換えて、同じ土俵に直す。MOQ(Minimum Order Quantity。1回に最低これだけ買わないと受けてもらえない数量)の差も、揃えてから比べる。この補正をやらずに数字だけ見ると、判断を誤ります。

現場感覚で言うと、辞退の連絡を省くのは損です。選ばなかった社に何も伝えないと、次に声をかけたとき対応が変わることがあります。逆に、本命が先に決まっているのに形だけ他社へ見積を頼む出来レースも、相手の手間を奪い、信頼を損なうリスクがあります。

この7手順を部内の発注ルールとして共有すると、担当者ごとの比較のバラつきが消えます。誰が回しても同じ土俵で比べられる。共有のときは「うちの部門では今どのステップでつまずいているか」を1on1で話す起点にしてみてください。見積の質を底上げする一手になります。

最安選定は交渉の放棄|相見積もりを交渉の材料に変える

一番安い数字を選んで終わるのは、交渉を放棄したのと同じです。相見積もりの本当の価値は、価格の根拠を示して、対等に協議するための材料が手に入ることにあります。

データを見ても、その材料が活かされていない現場は多いようです。すべての受注者と定期的に協議を実施した発注者は23.7%にとどまり、裏を返せば76.3%は協議が不十分という調査結果があります。せっかく見積を集めても、価格の話し合いにつなげていない現場が多いわけです。私の経験では、定期的に見直す現場とそうでない現場では、長い目で見たコスト水準にじわじわ差が出てくる印象があります。この76.3%の側に居続けないこと自体が、管理職にとっては費用対効果に直結する論点です。

ここで考え方を1つ。複数の代替先を持っていること自体が、交渉力の裏付けになります。優越的地位の濫用(取引上の力が強い側が、相手に不利な条件を押し付けること)を戒める公的な考え方では、「代替取引先の有無」が判断要素として挙げられています。これはもともと、受注側がどれだけ発注者に依存しているかを見るための観点で、発注側の濫用を戒める話です。逆手に取って圧力をかけよという意味ではありません。ただ裏を返せば、代替先を複数そろえておくこと自体が、特定の取引先に縛られない健全な交渉の土台になる、とも読み替えられます。

実際の使い方も、突きつけ型ではうまくいきません。最安値を見せて「これに合わせられますか」とYesかNoを迫るより、複数社の見積から材料費・加工費・利益のおおよその構成を読みます。読むときの取っ掛かりは、例えば、同じ部品を過去に別の社から買ったときの単価と照らし合わせること。あるいは、材料費が銅や鉄、アルミといった市況に連動する部品なら、その相場の動きと突き合わせること。どこに削れる余地がありそうか、当たりがつきます。そのうえで、一緒に探っていく。このほうが、長い目で見て成果につながりやすいと考えられます。相見積もりは安いところ探しではなく、対等に交渉するための地ならしなのです。

まとめ

ここまでの要点を振り返ります。

  • 相見積もりは安い社探しではなく、適正価格を確かめる協議の材料づくりです
  • 仕様・数量・代金や算定・納期・支払条件・受領場所の6項目を揃えないと比較は成立しません
  • 取り方は7ステップ。仕様を固めてRFQで条件をそろえ、交渉や辞退連絡まで通すと地ならしが完成します
  • 一番安い数字で決めるのは交渉の放棄。結果を価格協議の材料に変えるのが本来の使い方です

まずは、いま手元にある直近の相見積もりを1件取り出してみてください。各社の数量と支払条件がそろっているか、見比べるだけで気づきがあるはずです。次の一歩として、社内のRFQひな型や発注書フォーマットに6項目の記入欄があるか、先輩に聞いて確認してみる。もし無ければ、自分で6項目の欄を作っておく。それだけで、次回から比較が崩れにくくなります。

この条件統一とRFQひな型の整備は、目先の発注を整えるだけの話ではありません。誰が回しても同じ土俵で比べられる状態は、いずれ調達システムの導入や発注プロセスのデジタル化に踏み出すときの足場にもなります。見積の精度を上げる入口だと考えると、地味な6項目の整備にも意味が見えてきます。

相見積もりから価格交渉へ。もう一段階上を目指すなら

相見積もりで揃えた土俵を、実際の値下げ交渉でどう使うか。さらに深く学びたい方には、「調達歴20年現役バイヤーが教える!明日から使える 資材調達コスト削減交渉術」が、本記事の考え方を交渉の型として演習形式で扱っています。調達の入口から整理したい方には、「配属1日目の教科書〜未経験から始める調達・購買の基礎〜」が補助線になります。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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