求人票の「調達経験3年以上」を見て、自分が毎日やっている発注や納期管理は、この調達経験に入るのだろうか、と迷ったことはありませんか。
正直なところ、正社員として採用されるかどうかは、会社の枠の事情にも左右されます。そこは動かせません。動かせるのは2つです。買う条件を決める仕事に、自分にできる範囲で関わること。やったことをその日のうちに書き留めること。どちらも、今の立場のままでできます。
こんな方におすすめの記事です。
・派遣社員・契約社員で、正社員の調達部門へ移れるか知りたい方
・自分の仕事は調達なのか事務作業なのか分からない方
・職務経歴書に「発注業務」「納期管理」以外に何を書こうか迷っている方
発注事務と調達を分けているのは、名前ではなく仕事の中身

発注事務と調達が分かれているのは名前ではなく、仕事の中身です。決まった条件のもとで買うのが一方で、その条件そのものを決めるのがもう一方です。
決まった条件のもとで買う仕事とは、毎日の発注と納期管理を着実にこなす仕事です。数量の桁を1つ間違えれば、次の日の製造が止まります。誰かが必ず守らなければならない正確さがここにあります。
条件を決めるとは、どこから買うか、いくらで買うか、いつまでに間に合わせるかを決めることです。値段と発注先を最後に決めるのはバイヤーで、最終の承認は上司が出します。これは雇用の形とは関係のない、決め方の仕組みです。
ただ、発注事務の仕事で重要なことが、3つあります。1つめは、サプライヤからの納期の回答がどこまで遅れたら手を打つか、という自分の中の目安を持つこと。2つめは、同じ品目を別のサプライヤならいくらで、いつまでに出せるか、という比べる材料を注意深く観察すること。3つめは、自分の後にこの仕事を引き継ぐ人が迷わないように、手順を書き残すこと。
3つとも、派遣でも契約社員でも手が出せます。積み上げると、職務経歴書に書ける実績になります。

今の立場のまま積める実績3つ

順番はありません。自分の毎日にいちばん近いものから始めてください。
1. 納期の遅れを、起きる前に止める
遅れそうな気配は、まだ遅れという形になっていません。いつもは数時間で返るサプライヤからの返事が、丸一日返らない。この時点では、遅れの連絡はどこからも来ていません。
そういうときは、リーダーや先輩と生産の計画を担当する部署へ、返事が止まっていることを先に伝えます。サプライヤには、今どの工程まで進んでいて、いつ出せる見込みかを確かめます。まだ遅れていないうちに動くぶん、遅れてから動くより打てる手が多く残るはずです。
遅れましたという事後の報告なら、誰でも出せます。ここでやっているのは、どのような状況になれば危ない状況と呼ぶかを自分で決めることです。
担当していた頃、契約社員の方が、返事の遅さを理由に、危ないと先に教えてくれたことがありました。生産の計画を担当する部署にも自分で声をかけ、間に合わないときの対応まで相談したうえでの話です。それからは、私がその人に信頼を置くようになりました。
2. 単価の見直しを、自分から言い出す
相場が下がっているのに何年も動いていない単価。
毎日発注していると、こういうものが目に入ります。
気づいたら、そのままバイヤーへ伝えてください。バイヤーは多くの品目を担当していて、全部の単価の動きを追いきれないことがあります。別のサプライヤのほうが安い、この単価は3年動いていない、と教えてもらえるのは助かります。
伝えるときに、1年でいくら買っているかと、これまでの単価の動きをそろえて渡すと、そのまま検討に入れます。
単価を見直すかどうかを決めるのはバイヤー。それでも、どの品目を候補に挙げるかを提案するのは自分です。
単価を下げてほしいという申し入れは、バイヤーを通します。納期の確認とは、そこが違います。
3. 手順を、次の人が使える形に作り直す
手順書やマニュアルがある職場は多いと思います。ただ、書かれているのは操作の手順までで、うまくいかなかったときの判断は残っていないことが多いです。納期が遅れたら誰に伝えるか。それと、システムに出てこない決まり。あるサプライヤは、火曜の午前までに発注しないと翌週の生産へ回される、といった類です。
誰も書いていなかった埋もれている知識や経験を書き残す。それだけで、次にこの仕事を引き継ぐ人が迷う回数が1つ減ります。
3つとも、メモでいいので、やった日のうちに書き留めておいてください。時間がたつと、自分がどう対応して、その後どうなったのかを思い出せません。
やったことを、職務経歴書に載る形にする

作業だけを書くと簡単に1行で終わってしまいます。「注文書を発行した」「サプライヤに納期を確認した」では、どんな問題に気づいて何を変えたのかが伝わりません。
書く順番は、困っていたこと、自分がしたこと、その後どうなったか、の3つです。納期の場面なら、こう書けます。
「サプライヤの回答の遅れを納期遅延の気配としてバイヤーに共有し、生産の計画を担当する部署と代わりの方法を事前に決めた」
数字は入れたほうがいいです。説得力が出ます。何日前に気づけたか、何品目を候補に挙げたか、遅れを何件防いだか。正確に出せないなら、おおよその数でもかまいません。
その書き留めが無ければ、職務経歴書に並べる材料もありません。よくある失敗ですが、なにをやったか書き留めてはいたのに、そこにも作業の名前しか書いていなかった、ということが起きます。内容を書きましょう。
声がかかるかは会社の事情にも左右される。2つの道に備える
私がいた職場では、正社員の枠は、年間の人員の計画と予算で先に決まっていました。現場が人を増やしたいと思った時点で動くものではありません。あなたの努力が足りないという話ではありません。
同じ職場で3年働くと、その先どうするかを考える時期が来ます。ただ、派遣で3年働いた人を必ず正社員として採用する制度を定めている職場は、多数派ではありません。制度がある職場でも、毎年のように採用があるとはかぎりません。逆に、制度が無いのに採用している職場もあります。制度の有無だけで決まるわけではありません。
だから書き留めは、2つの道のどちらでも使える形にしておきます。今いる職場で正社員を目指すなら、任せてもらえる範囲を上司やバイヤーと相談する材料。別の会社へ移るなら、そのまま職務経歴書の材料になります。今の上司が見るところも、移った先で採用を決める人が見るところも、そう遠くない視点のはずです。何に気づいて、どう動いて、何が変わったか。
まとめ
会社の採用枠は、自分では決められません。決められるのは、次に活躍できる場面が来たとき自分がどう動くかです。
3つのうち1つ選んで、その場面が来たらやると決めておいてください。やったら、その日のうちに書き留める。これまでに何が起きて、自分がどう動いたか。それを書き出すだけなら、場面を待たずに今日から始められます。
何を見て決めればよいのか、その判断の目安を、日々の仕事の中で教わる機会は少ないと思います。Udemyの講座「配属1日目の教科書〜未経験から始める調達・購買の基礎〜」では、調達の仕事の全体の流れと、品質・価格・納期の3つで見るという判断のものさしを説明しています。バイヤーが判断のときに何を見ているのか、そこが分かる内容です。
