購買の仕事を探すと、たいてい大手メーカーか中小メーカーか商社かの3択になります。求人票を並べても、どれが自分に合うのかは決められません。
この3つだけで選ぶと、入社してからの仕事が想像とずれます。中身を決めているのは会社の大きさではなく、別の5つだからです。その5つで、これから何が身につくかも決まります。
こんな方におすすめの記事です。
・大手メーカーと中小メーカーと商社で、購買がどう違うのか知りたい方
・求人票を読んでも、入ったあと何をするのか想像できない方
・どこを選べば後悔しないのか、軸がほしい方
別物にしているのは、会社の大きさではない
同じ会社の中でも、鋼材の担当と工場の設備の担当では、話す相手も交渉の中身も違います。
仕事の中身を決めるのは次の5つです。
- 何を買うか(どの品種を担当するか)
- いくらくらいのものを扱うか(1件あたりの金額はどれくらいか)
- どれくらいの頻度やスパンで買うか(毎日の発注が続くのか、年単位の案件を追うのか)
- 誰が決めるか(1件の買い物のどこまでを自分が担当するか)
- 誰と話すか(相手にとって自社がどれくらいの取引先か)
この記事では、メーカーを大手と中小に分け、商社を加えた3つで見ていきます。ただしこの分け方は、5つにどんな傾向が出るかの目安です。
何を買うか。品種を分担するか、全部受け持つか

担当の割り振りを決めているのは、その品種をいくら購入するかです。支出の小さい品種に専任を置くと人件費が見合いません。会社が大きくても、そこは1人がまとめて持ちます。
大手メーカーでは品種ごとに担当を分担しやすく、中小メーカーでは材料も部品も外注加工も1人で受け持つことが多いようです。商社が買うのは自社で使うものではなく販売先から注文を受けた商品なので、担当が品種ではなく販売先で分かれることもあります。
狭く深いとその品種の相場や製造方法に詳しくなり、広く浅いと幅広く見積を取って価格や納期を比べる力が身につきます。
求人票の仕事内容の欄に品種の名前があれば業務分担が進んでおり、「購買業務全般」とだけなら全部受け持つ可能性があります。
いくらくらいのものを扱うか。動かす金額と、自分の裁量は別
求人票に「年間取扱高」の数字があると、その金額を自分が動かせるように読めます。
ですが会社が動かす金額と、自分が扱う金額は別ものです。
会社には、職位ごとにいくらまで決めてよいかを定めた決裁権限表があります。いくらまでは担当者、そこから上は課長、さらに上は部長、という形です。金額が上がるほど承認する人が増えるので、1件が決まるまでの時間も変わってきます。
大手メーカーは動かす金額が大きい分、担当者の裁量で判断できる範囲は下に引かれがちです。商社では販売先へ売る値段もあるので、いくらまで出してよいかがその案件の採算で決まります。中小メーカーの範囲は、経営者次第なので、買う側から見ていて分かりません。
取扱高の数字を自分の決められる範囲だと読んだまま入ると、想像していた仕事との落差に驚きます。会社選びの軸になるので、面接で聞いてください。
どれくらいの頻度やスパンで買うか。毎日の発注か、年単位の案件か

毎日発注をかける品種と、数年に一度しか買わない品種では、1日の過ごし方が変わります。
量産に使う材料や部品は、注文から納入までが短く、発注の件数が多くなります。仕事の中心は、納期どおりに届けてもらう段取りと、日々起きる遅れへの対処です。設備や専用品は納入まで半年や1年かかり、仕様を決めるところから設計や生産技術と一緒に動きます。
大手メーカーではこの2つが別の担当に分かれていて、量産材だけ、設備だけ、という配属になります。中小メーカーでは同じ人が両方を持つのが普通です。商社は販売先から注文を受けてから仕入れるので、頻度もスパンも販売先の商売しだいで決まります。
前者では、遅れの兆しを早くつかんで手を打つ段取りが身につきます。後者では、仕様を詰めるやり取りと、長い期間をかけて1件をまとめる進め方が身につきます。
求人票の仕事内容の欄に「量産」「納期管理」「生産計画」とあれば前者、「設備」「工事」「新規立ち上げ」とあれば後者です。
誰が決めるか。1件の買い物のどこまでを自分が担当するか
サプライヤを選んで価格を決める人と、発注して納期を追いかける人が別なのか、それとも1人が最初から最後まで受け持つのか、という話です。
診断士として支援に入った中小メーカーでは、購買の担当は1人、アシスタントの方が1人でした。その方はサプライヤを選ぶところから発注、検収まで受け持ち、承認は工場長、金額が大きいときだけ社長でした。私の会社では同じ1件に品質保証と生産管理の同意が要るので、決まるまでの速さは比べものになりません。
分担するのは、不正を防ぐためです。1人が発注から検収、支払いの手配まで進められると、実際には無い取引の代金を払っても、水増しした請求書を通しても、社内の誰も気づけません。だから選ぶ人と発注する人と検収する人を分けます。
1件にかかる時間は増えますが、その代わりに不正を防げるのです。どこまで分担するかは、会社の大きさではなく、その会社がこの仕組みをどこまで置いているかで決まります。
商社では、仕入れる相手との交渉と販売先への提案が、同じ人の仕事になることがあります。買うと売るが1人の中でつながるので、メーカーの購買とは持ち場の形が違います。
担当の範囲が広ければ、自分で責任を負う場面が増えます。社内に前の例が少ないぶん、迷ったときに聞ける相手も限られるはずです。決裁が速い会社なら楽に働けそうだと考えて入ると、ここで戸惑います。
求人票の仕事内容の欄に「発注業務」「納期管理」だけが並んでいれば、選ぶところは別の方が担当している可能性があります。「サプライヤ選定」「価格交渉」まで並んでいれば、1件を通して受け持つ側です。この見方は、1つ目の品種の広さとは別です。品種が横の広がりなら、こちらは1件の仕事の深さにあたります。
誰と話すか。相手にとって自社がどれくらいの取引先か

やり取りの中身を決めているのは、相手の売上に占める自社向けの割合、代わりに買えるサプライヤが何社いるか、乗り換えにかかる手間と費用です。どれも会社の大きさそのものではありません。
このうち自分がいちばん実感するのは1つ目です。相手の売上に占める自社向けの割合が大きければ、価格や納期の相談を受け入れてもらいやすくなります。
材料のメーカーが相手だと、この割合が小さくなります。こちらから価格の見直しをお願いしても、何か月も返事が来ませんでした。自社が大手メーカーでも、この取引ではこちらが相手の都合に合わせます。
だから大手メーカーにいても、相手の事情を聞きながら進める交渉が毎日あります。中小メーカーにいても、相手の主要な客であれば相談は通りやすいはずです。商社の場合も、その商社の規模とそれまでの取引条件が先に来ます。
求人票の仕事内容の欄から、サプライヤが国内か海外か、既存の維持か新規の開拓かを読み取れることがあります。新規の開拓とあれば、まだ実績の無いところから関係を作る仕事が多くなります。
相手の事情を聞きながら条件を探る場面が多いのか、こちらの求めるものを先に示せる場面が多いのか。身につく交渉の進め方が変わります。
まとめ
何を買うか、いくらくらいのものを扱うか、どれくらいの頻度やスパンで買うか、誰が決めるか、誰と話すか。この5つで、その会社の購買の形が決まります。大手メーカーか中小メーカーか商社かは、その傾向を示す目安にすぎません。
志望先の求人票を1枚出してみてください。5つのうち4つは、仕事内容の欄と組織の説明から見当がつきます。残るのは自分の裁量で発注できる金額で、これだけは書かれていないので面接で聞いてください。
ただし、入社してからの数か月で何をするかまでは、求人票に書かれていません。「配属1日目の教科書」では、発注書の意味からサプライヤの選び方まで現場で使う順に並べているので、配属初日に隣の先輩へ何を聞けばよいかが分かります。
