資材調達のやりがい4つ|数字が動く瞬間と、感謝されにくい仕事の報い

資材調達のやりがい4つ、数字が動く瞬間というタイトルと、値札と下向き矢印・工場とプレス機・中心から4人へ広がる線・かばんと名札の4つのアイコンを横一列に並べたアイキャッチ画像

配属されて数か月。発注書を出し、納期を確認し、遅れそうなサプライヤに電話をかける。その繰り返しの中で、この仕事の何が面白いのか分からなくなる時期があります。私にもありました。

あなたの資材調達のやりがいは、「ありがとう」と言われた回数でしょうか。それとも、自分が決めた一つの金額と、自分が選んだ一社が、会社の利益と工場の翌日をそのまま変えてしまうところでしょうか。この記事では、やりがいを4つに分けて説明します。そのうえで、この仕事が感謝されにくい理由も隠さずに書きます。

こんな方におすすめの記事です。
・資材調達に配属されたが、この仕事の面白さがまだ分からない
・就職先として資材調達を考えていて、実際のところを知りたい
・続けるかどうか迷っていて、判断する材料がほしい

この記事でわかること
・自分が決めた金額が、どこで会社の数字に変わるのか
・サプライヤの工場と、発注側自社の各部門で何が見えるのか
・資材調達で身につく力が、会社を移っても残る理由
・感謝されにくい仕事を、それでも続けている理由

目次

やりがい1 自分が決めた金額が、そのまま会社の利益になる

まず、いちばん分かりやすいところから。

ある部品の単価を1円下げたとします。その部品を年に何十万個も買っているなら、1円は年間で何十万円かの差になる。

営業が新しく受注を取ってきて、会社に売上げをもたらすのと違って、資材調達は既に決まっている支出を減らす仕事です。成功の確度は高いです。取れるか取れないか分からない、100件アタックしてようやく受注が1件という営業に対して、調達は、来年も買うと決まっているものの金額を動かしています

しかも、その、来年買う金額を組み立てるのは担当者本人です。もちろん承認は社内関係者に諮ります。ただ、どの見積とどの条件を並べて承認の場に出すかを決めるのは、日々その品目を見ている人しかいません。会社の中で、入って数年の人間がここまで金額に触れる職種は多くないと思います。

「資材調達」「調達」「購買」と呼び方は会社によって違いますが、やっていることは同じです。コストダウンした結果は、毎月から半期ごとに原価低減額として集計され、会社の営業利益にのってきます。でも自分の名前は載りません。それでも、その営業利益のいくらが自分の分なのかは自分には分かる。ここが最初の面白さです。

では、そのコストダウンはどうやって実現するのでしょうか。値下げをお願いする以外に、何ができるのか。

やりがい2 サプライヤの工場では、他社の技術を見せてもらえる

工場の中に据えられた大きなプレス機。手前の作業台には加工前の板材が積まれている

よくある話ですが、単価を値下げ交渉すると営業担当からは「難しいですねぇ」と返ってきます。そこで引き下がらず、どこが難しいのかを聞いていくと、話が変わってきます。

金額が下がる理由は、売り手の工場の中に落ちています。金型の段取り替えを1日に何度も入れている。材料の歩留まりが悪く、切り落とす部分が多い。ロットが小さくて設備が空く時間ができている。こういう事情は、こちらが発注のまとめ方や納入の間隔を変えると動くことがあります。値下げのお願いではなく、条件の組み替えです

そして、それを知るには工場に入るしかありません。私が初めてサプライヤの工場に入ったとき、まず目に入ったのは、とても大きなプレス機でした。

ここが資材調達の役得だと個人的には思っています。買う側だから、他社の生産設備と加工方法を見せてもらえる。自分の会社では扱っていない材料も、そこで見ることができます。

技術者でもないのに、いろいろな会社のものづくりを横断して見られる立場は、そう多くありません。さらに、技術者が見られるのは、自分の製品だけです。資材調達担当者は別の事業部・製品も横断してみる場合もあります。その結果、アイデアも横断的に活用することができます。

とはいえ、工場で答えを見つけても、それだけでは何も動かない。社内で稟議を通さないと、部品は1個も変わらないからです。

やりがい3 発注側自社の全部門と話す席は、資材調達にしかない

部品の実物と断面図を机に並べ、赤鉛筆で図面に印を付けながら2人で確かめている様子

部品を1点切り替えるだけで、関係する部門がずらりと並びます。

1点変えるだけで動く部門

図面を変えるなら設計。工程が変わるなら生産技術。初品の検査をどうするかは品質保証。切り替えのタイミングは生産管理と相談しないと決まりません。支払条件を変えるなら経理、契約書を直すなら法務が入ります。資材調達は、この全部と話をする側に立ちます。

つまり、会社の断面が見える職種なのです。設計にいれば設計の景色が、製造にいれば製造の景色が見えるようになる。資材調達は、どの部門の言い分も一度は聞かされます。若いうちにこれを経験しておくと、なぜその人がそう言っているのか、どこで詰まっているのかが、自分の言葉で説明できるようになる。私自身、この見え方は後々まで役に立ちました。

ただ、疑問も残ると思います。これら資材調達で培ったスキルは、この会社の中だけで通用するものではないのか、と。

やりがい4 交渉と数字の腕は、会社を移っても使える

そんなことはない、というのが私の実感です。

資材調達で鍛えられるのは、大きく3つ。相手の原価がどう積み上がっているかを推し量る力。ややこしく絡まった話を、関係部門それぞれが飲める形に調整する力。そして、その案がなぜメリットがあるのかを数字で説明する力です。

この3つは、扱う品目が金属から樹脂に変わっても、業界が自動車から電機に変わっても、そのまま持っていけます。買う側の仕事の骨組みは、どこでもあまり変わらないからです。

私は中小企業診断士の勉強もしましたが、財務と工場運営の科目は、日々やっていることと重なる部分が多くありました。実務がそのまま学習の下地になる職種は、意外と少ないと思います。社内で異動しても、別の会社に移っても、この3つは持って歩ける。そういう仕事です。

これだけ書いておいて何ですが、それならなぜ、辞めたくなる人が絶えないのでしょうか。

それでも、この仕事は感謝されにくい

人の姿がない工場の通路。両側に加工機とコンベアが並び、ラインは止まらずに動いている

職場の環境、報酬などもありますが、新たな視点の一つとして、うまくいった仕事が誰の目にも映らないからというのもあるのではないかと思います。

止めなかった日は記録に残らない

サプライヤの工場が止まりかけて、代替の手配を走らせ、結局ラインを止めずに済んだ。この日、製造部門から見れば「何も起きなかった日」です。止まらなかった納期は、記録にも残りません。逆に1回止めれば、その日のうちに全社に知れ渡る。防いだ側には何も返ってこず、失敗したときだけ名前が呼ばれる。この非対称は、正直こたえます。

それでも私が続けているのは、感謝は来なくても、ものづくりを通して、社会や会社に明らかに貢献している実感があるからだと思っています。自分が選んだ一社、自分が決めた一つの金額が、明日の工場と来期の数字を確かに動かしている。それを知っているのは自分だけです。

まとめ

明日、自分が処理した案件を一つだけ選んでみてください。その1件で、金額がいくら変わったのか、あるいは何件の発注で納期が止まらずに済んだのか。書き出してみると、たいていの人は自分で驚きます。数字は、誰も褒めてくれなくても動いているからです

配属されて数か月の自分に戻れるなら、私はここから始めます

面白さが分からない時期のいちばんの原因は、判断の基準を持っていないことだと思っています。見積のどこを見れば高いと分かるのか。納期回答をどこまで信じてよいのか。ここが空白のままだと、毎日の発注と納期管理を着実にこなすだけで一日が終わります。

Udemy講座「配属1週間目の教科書 〜見積から検収まで、日常業務を自分の手で回す〜」では、見積を取るところから、見積書の内訳の読み方、注文書と契約書の関係、納期が遅れたときの初動、検収で確認することまでを、実務で起きる順番どおりに扱っています。受け身で処理していた1件が、自分で組み立てる1件に変わります

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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