現地スタッフが報告しない理由|知らせてほしい時期をデッドラインから逆算して渡す

現地スタッフが報告しない理由、知らせてほしい時期を逆算して渡すというタイトルと、段ボール箱・日付に丸を付けたカレンダー・飛行機を並べ、カレンダーから箱へ戻る矢印を描いたアイキャッチ画像

海外拠点の現地の担当者から納期遅れの報告が届いたときには、空輸も代替品の手配も、もう間に合わない。社内や客先からは「なぜもっと早く分からなかったのか」と聞かれます。「早めに報告して」と何度伝えても、次もまた同じころに届くんです。

それは担当者のやる気の問題である前に、担当者が知らせる時期と、こちらが知らせてほしい時期のずれから起きているのかもしれません。

手を打てる最後の日から逆算した「箱が何個になったら」「何曜日に」を、理由を添えて渡せば、同じ担当者のままでもずれは縮められます。私も駐在していたころ、同じ報告を受けました。購買の経験で書きますが、海外駐在員として現地スタッフから報告を受ける立場なら、ほかの職種でも同じです。

こんな方におすすめの記事です。
・現地の担当者の報告が、打つ手がなくなってから届く方
・「早めに報告して」と伝えても変わらない方
・担当者を叱るか替えるか、全部を自分で確かめるしかないと感じている方

この記事でわかること
・報告が手遅れで届くと失われるもの
・担当者が、遅れが決まるまで知らせない理由
・知らせる時期と、知らせてほしい時期のずれ
・知らせてほしい時期を逆算して渡す方法
・確かでない報告の聞き方と、悪い報告の受け取り方

目次

報告が手遅れで届くと、打つ手が1つずつ消えていく

夜の空港で、駐機した旅客機の貨物室へ荷を積み込んでいる様子

納期が遅れそうなとき、こちらが打てる主な手は3つです。空輸などの緊急輸送へ切り替える、代替品を手配する(取引のある別の買い先から買う、同等品に替える)、社内や客先へ連絡して納期を変えてもらう。どれも、報告を受けたこちらが動き出す手です。

方法ごとに、手を打てるデッドラインが違います。ただ、緊急輸送の手段では、船便から空輸への切り替えは、出荷地域によっては大きな効果があります。しかし、通常空輸を使っていて、それをさらに緊急で輸送する便に変えても、縮む日数はわずか。

代替品は見積を取るだけで日数がかかり、仕様の決まった品なら評価が必要だし、客先が買い先を指定している品なら客先の承認が加わります。社内や客先への連絡も、それぞれが計画を組み替えられるうちでなければ間に合いません。

報告が遅れるほど、選択肢が消えていきます。遅れの日数が同じでも、いつ知ったかで残る選択肢の数が変わるのです。

担当者は、遅れが決まるまで様子を見ていた

私が駐在して拠点の購買を見ていたころ、自社の現地の担当者から、納期遅れの報告が手遅れで届いたことがあります。空輸も代替品の手配も間に合わず、社内や客先への連絡も遅れました。担当者は、遅れが決まるまで様子を見ていました。

私がしたのは、確かめる頻度や時期を変えることと、担当者に報告が遅れた理由を聞くことです。彼は、自分で何とかしようとしていた。担当者は、こちらが打てる手とデッドラインを知らなかったのだと思います。

同じ形の話は、ほかにもあります。別の現地の担当者は、納品が遅れたとき「最初は解決できると思って、報告はしませんでした」と話しています。日本の会社で働く人も、在庫が危ないと気づいたとき「なんとか自分でリカバリーしよう」として、在庫が完全に底をついてから報告しました。2人とも、自分で片付けられると思っているあいだは知らせませんでした。

担当者から見れば、その気持ちはなんとなくわかります。自分ではどうにもならないと分かるのは、たいてい遅れが決まったとき。決まる前に懸念を伝えれば、「自分にマイナスの評価が下されかねません」。そのあいだにも、手を打てる日は過ぎていきます。

私の担当者の話に戻ると、理由を聞いたあと、こちらが打てる手とデッドラインを担当者に説明しました。手遅れの報告は、だんだん減ってなくなりました。担当者が、報告を上げるべきタイミングを体得していったからです。

知らせる時期と、知らせてほしい時期がずれている

担当者の「報告を上げるべきタイミング」は、こちらが知らせてほしい時期、つまり打つ手が残っているうちです。ところが担当者が知らせるのは、遅れが決まったときです。

担当者からは、どのような選択肢があるのか、その選択肢が取れるデッドラインはいつなのかが見えていないと考えられます。こちらは「早めに」とは言っても、何日前かとか、在庫が何個になったらかは言っていません。「何かあったら報告を上げてくれ」という指示はまったく具体的ではありません。

誰にも教わらず、注意されながら、日本式の報告や相談の型を身につけた担当者もいます。ただ、身につくまでには長い時間がかかります。そのあいだはトラブルがなくなりません。だから、担当者任せにせずにこちらから渡します。

知らせてほしい時期は、打つ手のデッドラインから逆算して渡す

倉庫の棚に並んだ段ボール箱へ、作業者が手を伸ばしている様子

渡し方は4つの手順です。

逆算して渡す4つの手順
  1. リカバリーの方法ごとに、納期の何日前まで打てるか(デッドライン)を出す
  2. 残したい方法を決める
  3. その方法がとれる最後の日より前に、担当者が毎日見ている数や、決まった曜日で知らせる条件を置く
  4. なぜその条件なのかを添える

新しいサプライヤに切り替えるという方法は、立ち上げに何か月もかかると見込む会社もあり、危機が迫った状況では使えません。比較的取りやすい方法は空輸など特急料金を払って早い輸送にすることです。運賃は通常の何倍にもなりますが、運ぶ日数が短いぶん最後の日が遅く、最後まで残りやすい手です。

数で渡す

海外の工場で欠品と生産の遅れを無くした在庫管理の例では、未開封の箱が2個になったら報告する、と決めていました。2個は「船便で送っても間に合わない=飛行機を要請しなければいけない在庫数」です。知らせてもらう数を、これに1個足した3個にすれば、空輸にはまだ間に合います。残したい手を空輸と決め、その最後の日より前の点を、担当者が毎日見る箱の数に置き換えたわけです。

在庫を2つのブロックに分けて持つやり方でも、2つ目のブロックの量は、補充が届くまでに使う分から逆算します。

日で渡す

同じ在庫管理の例では、港の状況を毎週火曜日に確かめて知らせる、とも決めていました。理由は「間に合わない場合は、飛行機にスイッチできるように」と「週末ギリギリの報告を避けるため」。週の早いうちなら、空輸を手配する日が週の中に残ると考えられます。報告の期限は時刻まで指定しています。

理由を添える

条件には、「この数になると船便では間に合わず、空輸をすぐ頼まないといけないから」と、その先で打つ手を理由として添えます。どういう判断をするために報告を求めているかを「指示する時点で認識を合わせる」ことです。

理由が渡っていれば、決まりに当てはまらない場面でも、知らせるかどうかを担当者が自分で判断できます。理由のない求めは、細かい管理と受け取られることもあるでしょう。

確かでない報告の聞き方と、悪い報告の受け取り方

倉庫の棚の前で、2人がクリップボードの書類を一緒に確かめている様子

現地の担当者に指導をしても、すぐには変わりません。在庫管理の例でも、毎回、毎回、指摘をして正直心が折れそうな毎日でした。それでも2か月目くらいから、報告の期限が守られるようになってきました。型を誰にも教わらずに年単位かかった、先ほどの担当者と比べれば、短い期間です。知らせる条件が守られ始めると、遅れが決まる前の確かでない報告が届くようになります。

「どこまで進んだか」と聞く

確かでない報告が届いたら、「問題ない?」ではなく「今どこまで進んでいる?どこで詰まっている?」と聞きます。この問いなら、確かめても「問題ありません」しか返ってこない悩みから解き放たれるでしょう。

担当者の側は、聞くと面倒がられると思って上の人に聞けないことが多いものです。だから、こちらから聞く。聞くのはその件の途中の様子だけなので、担当者の仕事を全部確かめ直すのとは違います。

早く届いた悪い報告は、解決策が無くても受け取る

「解決策を持ってこい」と担当者に自分で片付けさせたままでは、大きな問題になる可能性があります。解決策が思いつかなくても知らせてよい、と伝えます。

どの手を打つかの判断は、報告を受けた時点でこちら(上司)が持つもの。型を自力で身につけた先ほどの担当者も「相談したのに解決策が間違っていたら、それは上司の責任」と話しています。海外勤務の経験者には、ミスをした担当者と一緒に上の人へ知らせに行った人もいました。悪い知らせを、担当者ひとりに持たせないやり方です。

確かでない報告には、結局は遅れなかったものも混ざるでしょう。それもほめて受け取ります。早い報告を責めると、担当者は次から、遅れが決まるまで待つやり方へ戻ると考えられます。

まとめ

明日からできること

明日からできるのは、緊急の輸送・代替品の手配・社内や客先への連絡の3つについて、納期の何日前まで打てるかを書き出すことです。

その日数が書けないなら、手ごとに何日かかるかを、まだ確かめられていないのかもしれません。「配属1週間目の教科書」の「納期に間に合わせる」では、リードタイムの管理、遅れの原因とその前に出るサイン、遅れが分かったときのはじめの3手を扱います。見終えれば、手ごとの日数を書き出すときに使うリードタイムの見方が身につきます。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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