間接材の発注、棚卸、在庫管理――これだけで一体どれくらいの時間を使っているか、正確に把握していますか。
- 間接材(切削工具・消耗品・MRO品)の発注業務に追われ、本来の購買戦略に時間が割けない調達担当者
- 「間接材のDXを進めたい」と思いながらも、どこから手をつければよいか分からない方
- VMIや間接材の自動発注という言葉は聞いたことがあるが、実際の仕組みが見えていない方
この記事を読むと、次の3つが得られます。
- 「発注レス・在庫レス・管理レス・棚卸レス」の4フレームが具体的に何を変えるか
- なぜ間接材調達は改善が後回しになるのか、構造的な理由
- 自社への導入を検討するときの「最初の一手」と判断基準
バイヤー現場20年・中小企業診断士の視点から、現場の実感を交えた解説です。
なぜ間接材調達は「見えないコスト」になるのか
間接材の本当のコストは、購入価格何倍にも膨らんでいる可能性があります。
発注工数+管理工数+棚卸工数+欠品ロスの合算を購入価格と合わせてトータルで見ると、年間数百万円規模のコストが見えないまま積み上がっている可能性があります。
DX推進指標 2022年自己診断結果分析レポート(2023年3月・経済産業省・IPA)によれば、64%の企業が「調達・購買プロセスのデジタル化が不十分」と回答しています。その中でも、間接材は直接材と比べて後回しにされやすいと感じています。
製造業では、直接材の調達は利益への影響が数値で見えやすいため、改善投資の対象になりやすいです。
一方、間接材(切削工具・消耗品・MRO品など)は1件あたりの金額が小さく、「誰かがやっている」状態のまま年月が経つケースが少なくありません。
発注とか棚卸、本当に時間がかかりますよね。
でも直接材ほど注目されない…
そこなんです。単価が小さく、品種が多いから工数の合計は膨大なんですよ。
工場内の棚に積み上がったドリルビットを前に、「これを全部、誰かが発注して棚卸しているんだなあ」と気づいた瞬間があります。単価500円のドリルが、発注・受領・棚卸の工数を含めると実質3,000円超になってしまうことも。
間接材のコストは購入価格だけでなく、発注・管理・棚卸の工数を含めたトータルで考える必要がある。年間数百万円規模のコスト削減の可能性が隠れている。
間接材調達を変える「4つのレス」設計――590工場・7割削減の仕組み
間接材調達に関わる4種類の業務を仕組みとして不要にする――それが「4つのレス」設計です。
MISUMIが展開するfloowサービスは、工場に間接材の自販機を設置して、その自販機をVMI(Vendor Management Inventory)として運用しています。590工場・自販機2,000台超への導入実績を持っているようです(2025年10月時点)。
発注レスとは、現場のスタッフが必要なときに自販機から取り出す。センサーや在庫データの自動検知によって発注業務そのものを不要にする設計です。在庫が設定した閾値を下回ったとき、システムが自動でサプライヤーに補充指示を送ります。
在庫レスとは、VMI(ベンダー管理在庫)によってサプライヤー側が在庫を保有・管理する設計です。工場側は在庫保有リスクを持たない契約モデルに変わりますが、個別の契約条件による差異があります。
管理レスとは、品目管理・承認フロー・受領確認をシステムが代替する設計です。棚卸レスとは、自販機型の払い出し管理でリアルタイムの在庫把握が常時可能になり、年次棚卸作業そのものが不要になる設計です。
一方で、「小規模の工場には導入できない」という懸念は理解できます。実際、自販機型モデルは大手製造業からの展開が中心です。ただし、4つのレスの思想を部分的に取り入れるだけでも、発注・棚卸の工数を3〜4割削減できるケースを現場で見てきました。
自社に「4つのレス」を取り入れるための最初の一手
自社に4つのレス設計を取り入れるには、まず「品目の標準化」と「消費量の予測可能性」の2条件を確認してください。この2点が揃っていない間接材に自動発注やVMIを適用すると、欠品か過剰在庫のどちらかに陥りがちです。
私自身、試作部門の消耗品にVMIを適用しようとして失敗した経験があります。試作品の種類と数量が月ごとに大きくばらつくため、自販機の在庫が突然空になり試作ラインが止まりました。標準化されていない品目に4つのレスを当てはめようとした典型的な失敗でした。
えっ、VMIって全ての品目に効くわけじゃないんですか?
そうです。需要が読める品目だけが対象。試作品みたいに変動が大きいと、システムが対応できない。
最初の一手は、品目リストの整理です。4つのステップで確認してください。
まず現状把握。12か月間に発注した間接材を品目毎に整理します。
品目毎に月別の消費数量をまとめます。在庫管理システムやERP上で月次レポートを抽出します。
安定性の指標は「標準偏差÷平均(変動係数)」。0.3以下が目安です。毎月1,000個±50個という品目が有望候補。
選定した品目から優先度を付け、サプライヤーと実装の交渉を開始します。
さらに、間接購買を特定のプラットフォームに集中させることで価格交渉力の向上も期待できます。東京大学松尾研究室が2026年に実施したAI経営講座では、間接購買の集中管理による16%コストダウン事例が取り上げられています。件数をまとめると交渉のテーブルに乗りやすくなる、というのは調達の基本原則です。
①リストアップ
→ ②データ確認
→ ③安定品目抽出
→ ④優先候補化。
この順序を守ることで、導入リスクを最小化できます。
まとめ
本記事では、間接材調達の「4つのレス」設計について3つの切り口で解説しました。
- 間接材のコストは購入価格だけでなく、発注・管理・棚卸の工数コストを含めたトータルで考える必要があります
- 「4つのレス」設計は、VMIと自販機型管理の組み合わせによって発注・在庫・管理・棚卸の4業務を同時に圧縮する考え方です
- 導入の第一歩は、品目の標準化と消費量の予測可能性の確認からはじまります
まずは自社の間接材リストから過去12か月の発注データを抽出し、消費量のばらつきが小さい上位20品目を洗い出してみてください。
それが4つのレス設計の出発点です。間接材を「聖域」にしておくにはあまりにもったいないです。
