またポテチ値上げか…その裏に隠れた『コストアップの連鎖』

ふとスーパーの棚で思うその疑問、めちゃくちゃ分かります。

実はその裏側には、あなたの会社の未来を左右しかねない、もっと根深い問題が隠れているんです。

これは、ポテチという「炭鉱のカナリア」が発する警告なのかもしれません。
資材調達の現場では、この値上げの波が様々な業界に深刻な影響を与えているのが現実です。

こんな方におすすめ
・サプライヤーからの相次ぐ値上げ要請に、正直うんざりしている方
・コスト削減のプレッシャーと供給不安の板挟みになっている資材調達担当者
・「物流2024年問題」が自社にどう影響するのか、リアルな話が聞きたい方

この記事で得られること
・ポテチ値上げの真因である「コストアップの連鎖」構造の理解
・明日から使える、サプライヤーとの交渉や社内調整の実践的なヒント
・コスト高騰時代を生き抜くための、調達戦略の新しい視点

目次

絶望的な値上げの連鎖

まず結論から言いますが、ポテチの値上げは、じゃがいも不足なんていう話だけでは決してありません。
あれは、ほんの入り口に過ぎない。

本当の犯人は、原材料、包装材、エネルギー、物流、そして人件費という、製品が出来上がるまでに関わる全てのコストが、まるでドミノ倒しのように連鎖して価格を押し上げる現象です。

カルビーが何度もポテトチップスの価格を引き上げると発表しましたよね。
多くの人は「またジャガイモか」と思ったはずですが…

その内訳をよく見ると、原材料費だけでなく「エネルギーコスト、物流費などの上昇」がハッキリと明記されているんだよ。
これが資材調達の現場で起きている現実なんだ。

2021年頃、ある資材調達担当者が経験した、ヒヤリとする事例があります。

包装フィルムのサプライヤーから、「原油価格と輸送費の高騰で、5%の値上げをお願いします」と連絡が来ました。

当時、同様の要請が相次いでいたこともあり、その担当者は「またか…」と正直うんざりしていました。

そして、「社内調整が難しいので、なんとか3%でお願いします」と、いつもの交渉ルーティンで返答し、その場を収めてしまいました。

しかし、その数ヶ月後。
そのサプライヤーの担当者と話す機会があり、衝撃の事実を聞かされることになります。
「あの時、実は工場の電気代が前年の1.5倍に跳ね上がって、正直、生産すればするほど赤字やったんですよ。
あのままやったら、御社への供給を止める話まで出てました…」

担当者はぞっとしました。
彼は目の前の「購入価格」という数字しか見ていなかった。

しかしサプライヤーは、原材料費、自社の光熱費、そして顧客に届ける物流費という「三重苦」に喘いでいたのです。

でも、最近は原油価格も少し落ち着いてきたんじゃないんですか?

確かにWTI原油先物価格は一時期のピークを越えた。
でも、一度上がった人件費や、国内のトラックドライバー不足に起因する物流費は、そう簡単には下がらない。
表面的な指標だけで判断できないんだ。

静かなる脅威、物流2024年問題

さて、コスト連鎖の中でも特に根が深く、じわじわと日本中のメーカーの首を絞め始めているのが「物流2024年問題」。

これも、言葉だけが一人歩きしている気がします。
今は2025年ですから、昨年の問題と思いきや、今でもくすぶっている問題です。

「要は、トラックドライバーの残業規制で運賃が上がるんでしょ?」
そう思っているなら、認識が少し甘いかもしれません。

本質的な恐怖は、「運賃が上がる」よりも、「お金を払ってもモノが運んでもらえなくなる」という、物理的な供給網の崩壊リスクにあります。

全日本トラック協会の調査によると、トラックドライバーの有効求人倍率は常に全職業平均の約2倍で推移しており、慢性的な人手不足は明らか。

ここに時間外労働の上限規制が加わった。

結果、何が起きるか?ドライバーは労働時間内に長距離輸送ができなくなり、中継地で別の運転手にバトンタッチしなければなりません。
人手不足の中で、ですよ。

特に地方の工場から大都市圏へ、といったルートが維持できなくなりつつあるんです。

実際に、資材調達の現場では深刻な事態が頻発しています。
例えば、取引先の中小サプライヤーから突然、「いつも頼んでいる運送会社に、今週は長距離便の空きが一台もないと断られた」という悲鳴のような連絡が入るケースです。

こうなると、資材調達担当者はパニックに陥ります。
生産ラインを止めるわけにはいかないため、慌ててサプライヤの代わりに、スポット便(緊急便)を手配できる会社を10社以上探し回ることになります。
運良く一台確保できたとしても、提示される運賃は通常の1.8倍、あるいは2倍以上に高騰していることも珍しくありません。

このような、「モノが届かないかもしれない」という、従来では考えられなかったレベルの焦燥感と無力感は、今や多くの担当者が直面する現実の課題となっています。

孤独な闘いからの脱却

じゃあ、我々資材調達担当者は、この絶望的な状況にただ手をこまねいているしかないのか?
いや、そんなことはありません。
ただし、やり方を変える必要があります。

もはや、調達部門だけでサプライヤーと価格交渉を頑張る、という「孤独な闘い」の時代は終わりました。
社内の設計、生産管理、そしてサプライヤー自身をも巻き込んだ「チーム戦」に持ち込むしかないんです。

サプライヤーからのコスト上昇圧力が強まる中、従来の価格交渉は多くの現場で限界を迎えつつあります。

ここで一つ具体的事例の話を。

資材調達担当者が「そもそも、この製品スペックは過剰ではないか?」と疑問を持ったことが発端です。

その担当者は、価格交渉用のデータシートではなく、サプライヤーから直接ヒアリングした「エネルギーコストの悲鳴」や「物流の苦労話」といった、現場の生々しい窮状をまとめた資料を作成しました。

それを持って、設計部門のリーダーの元を訪れた時の提示メッセージは、単なるコスト削減要求ではありませんでした。

「これは我々のパートナーが置かれている現実です。このままでは、来年にも安定供給が危ういかもしれません。このスペックは、本当に必要不可欠でしょうか?」

当初、仕様変更に難色を示していた設計リーダーも、数字の羅列ではなく、現場の切実なストーリーと、それが自社の供給に直結するというリスクを認識し、次第にその姿勢を変えていったといいます。

結果、設計部門はフィルム仕様の根本的な見直しに着手。
品質基準を維持したまま数ミクロン単位でフィルムの薄膜化に成功し、最終的に年間何百万円ものコスト削減が達成されました。

数字だけじゃ、人は動きません。
でも、ストーリーと感情が乗った数字は、人を動かす力を持つ。

これが私の信条です。

結論:未来の安定供給をデザインするために

ポテチの値上げから見えてきたのは、もはや従来のやり方では通用しない、複雑で厳しい現実でした。
しかし、嘆いていても何も始まりません。
この変化を、自らの仕事を進化させるチャンスと捉えたいものです。

最後に、この荒波を乗り越えるために、あなたが今日からできることを3つのステップにまとめました。

  • サプライヤーと「雑談」する
    まずは、いつもの価格交渉の場ではなく、コーヒーでも飲みながら「最近、物流とか大変ちゃいます?」と聞いてみてください。彼らの生の声、現場の困りごとにこそ、次の一手のヒントが隠されています。

  • 社内の「仲間」を探す
    設計、品証、生産管理…。
    「コスト」という共通言語で話せる仲間は、必ず社内にいます。
    いきなり会議室で話すのではなく、まずはランチにでも誘って「実は今、こんなことで困ってて…」と相談ベースで話を持ちかけてみましょう。

  • 小さな「実験」を始める
    いきなり全社的な改革を目指す必要はありません。
    まずは特定のサプライヤー、特定の部品でいい。
    「パレット納品を試してみる」「代替材料の評価を始めてみる」など、小さく始められることから着手することが重要です。

もはや「資材調達」とは、単に安く「買う」仕事ではありません。
サプライヤーの声に耳を傾け、社内の知恵を結集し、未来の安定供給を「デザインする」戦略的な仕事へと変わりつつある。私はそう信じています。

この複雑で、正直しんどい時代を、サプライヤーや仲間と共に乗り越えていきましょう。
あなたのその一歩が、会社の未来を守る大きな力になるはずです。

「値上げの裏側」が見えるようになったあなたなら、次はその知識を”交渉の武器”に変える番です。
Udemy講座「コスト削減交渉術」では、コストアップの構造を理解した上でサプライヤーと対等に渡り合うための実践テクニックを5時間にわたって徹底解説しています。
値上げに振り回される側から、主導権を握る側へ。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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