こんな方におすすめの記事です。
・初めて複数社に見積もりを依頼する場面で、何を準備すればいいか迷っている方
・相見積もりを・取ってきたが、毎回同じサプライヤーが選ばれてしまうと感じている方
・部下に相見積もりの手順を教えたいが、体系立てた説明ができていない管理職の方
読み終えると、明日から使えるRFQ作成の型と、比較表に何を入れるべきかが手元に揃います。
相見積もりを取る前に揃える「RFQ7条件」
比較できない見積もりの最大の原因は、依頼条件の不統一にあります。
これを防ぐには、見積もりを依頼する前にRFQ(Request for Quotation/見積依頼書)で条件を揃えることが出発点です。
RFQとは、発注側が複数のサプライヤーに「この条件で見積もりをお願いします」と伝えるための書類です。
電話や口頭での依頼が多い現場でも、最低限このRFQに7つの条件を書き込むだけで、比較の精度が大きく変わります。
「7つも確認することがあるの?時間がかかりそう…」
最初は時間がかかりますが、1度テンプレを作れば次からは5分で条件を書き込めます。実は最も効率的な投資です。
RFQに必ず入れる7条件は次のとおりです。
以前、金属プレス部品で複数社に見積もりを依頼したとき、A社は梱包費込み・支払60日払い、B社は梱包費別途・支払30日払いで返ってきたことがあります。
表面上B社の単価は5%低かったのですが、梱包費を加算して支払条件の金利差を計算すると、実質的にA社とほぼ同等でした。
これがいわゆる「りんごとみかんの比較」です。条件が揃っていない見積もりを比べても、価格差の原因が分からないまま終わります。
この7条件を社内の相見積もり標準フォーマットとして整備しておくと、担当者が変わっても同じ品質の比較ができるようになります。
中小企業基盤整備機構の事例では、相見積もりの標準化により調達コストを平均7〜15%削減した企業事例が報告されています。小規模な会社でも1枚のExcelシートで十分です。まず「自社のRFQに上記7項目が含まれているか」から確認してみてください。
何社に頼むべきか:3社の根拠と「形骸化」の実態
原則は3社以上、ただし「有効な競合」に限ります。
なぜ3社が基準になっているのでしょうか。
実は公共調達(地方公共団体の物品購入など)の世界では、随意契約の際に原則として複数社(案件規模によって2〜3社以上)から見積もりを取ることが、法令上の義務として設けられています。
民間企業が社内規定で「3社以上」を定めているケースも、この考え方を参照していることが多いです。
コスト削減や透明性確保の観点から、複数社の比較は調達の基本として広く定着しています。
製造業の中堅企業では約45%が「相見積もりが形骸化している」と自己評価しています。
本命のサプライヤーはすでに決まっているのに、社内規定を満たすためだけに他の2社に声をかけ、返答が来ても真剣に検討しない、という状態です。
特定のサプライヤーとの長い取引実績を背景に、他社の見積もりを「参考として入手する」だけだった時期がありました。それでは競争圧力は生まれません。
「有効な競合」とは、実際に発注しても品質・納期・処理能力(生産キャパシティのことです)を満たせる力のあるサプライヤーに対して、本気で買う気がある相見積もりの依頼を指します。
声をかける前に「うちの会社は、本当にこの会社から買ってもよいか」を確認するのが先決です。
候補リストに入れる段階で確認をしておかないと、いくら3社揃えても交渉力のある比較にはなりません。
形骸化した相見積もりを毎年続けると、サプライヤー側も「また形式上の問い合わせか」と見透かすようになります。結果として、本命サプライヤーへの依存度が高まるだけです。
まずは現在の候補リストを見直し、有効な競合として参加できる会社を1社でも増やすところから始めてみましょう。
比較表と落とし穴:安い見積もりが本当に安いか確かめる3点
相見積もりで比較表を作るとき、単価だけを並べると3つの落とし穴にはまります。
各社から数字が出てきたとき、まずこの3点を確かめてください。
落とし穴① 最安値の後から追加費用
金属加工品や射出成形品では、初期見積もりで低価格を提示したサプライヤーが、受注後の仕様確認で「この部分は図面に記載がなかった」として追加費用を請求してくるケースがあります。発注後に判明すると、別のサプライヤーへの切り替えや仕様変更に手間とコストが新たに発生するため、実質的に受け入れざるを得なくなります。
防ぐには、最安値を提示したサプライヤーに「見積もりに含まれている範囲と含まれていない範囲」を発注前に文書で確認する1手間が有効です。
曖昧な仕様箇所を発注前に洗い出しておくことで、後からの追加請求を大幅に減らせます。最安値の見積もりには「何が含まれていて、何が含まれていないか」を1社ずつ確認する習慣をつけてください。
落とし穴② 条件が揃っていない比較
第1節で触れたRFQ7条件の話です。
見積もりが返ってきた時点で、各社の条件が本当に揃っているかを比較表の「前」に確認します。
支払条件と梱包条件は特に見落としやすい項目です。製造業の購買担当者への調査でも、「条件が統一されていないことで価格差の原因が分からなかった」と答えた人が過半数に上るという調査結果があります。比較表を作る前に、各社の条件を1行ずつ書き出して統一されているかを確かめてください。
落とし穴③ 取適法(旧下請法)の誤解
「相見積もりを取ることが取適法違反になる」という誤解を持っている方もいますが、それは正確ではありません。
複数社に同じ条件で見積もりを依頼することは合法です。問題になるのは、相見積もりの結果を使って通常の対価を大きく下回る価格を一方的に押しつける行為で、取適法の「買いたたき禁止」に抵触しうると公正取引委員会は指摘しています。比較根拠を持った上での合理的な交渉は問題ありません。詳細は公正取引委員会のガイドラインを参照してください。
①最安値の後から追加費用が出ないか、発注前に含有範囲を確認する
②各社の条件が統一されているかを比較表の前に確認する
③取適法は「相見積もり自体」ではなく「買いたたき」が違反。比較根拠を持った交渉は合法
まとめ
相見積もりを「意味のある比較」にするための3点を整理します。
- RFQに仕様・数量・納期・納入場所・梱包・支払・保証の7条件を揃えることが比較の前提です
- 3社以上の依頼が基本ですが、実際に競合できる「有効な競合」であることが前提。形式的な3社では交渉力は生まれません
- 最安値には「追加費用」「条件不統一」「取適法の誤解」の3つの落とし穴があります
相見積もりの標準化に取り組んだ企業では7〜15%のコスト削減効果が報告されており、その入り口はRFQ1枚の整備です。明日から取り組むなら、まずRFQに7条件を追記した自社テンプレを1枚作ることです。それだけで次回の相見積もりから比較の精度が大きく変わります。比較表が揃ったら、次は交渉の番です。見積もりを根拠にどう単価を下げるかは、別記事「調達コスト削減交渉術」でも詳しく解説しています。
相見積もりで比較根拠が揃ったら、次は交渉の番です。コスト削減の実戦交渉を体系的に学びたい方には、Udemy講座「調達歴20年現役バイヤーが教える!明日から使える資材調達コスト削減交渉術」が参考になります。5時間の実践コースです。
