物流2026年問題、今度は荷主の番だ|調達担当が知るべきCLO義務化の全貌

こんな方におすすめ
・「物流2026年問題、調達部門に関係あるの?」と疑問に思っている方
・2024年問題との違いをスッキリ整理したい方
・自社が特定荷主(対象企業)かどうか確認したい方

この記事で得られること
・2024年問題 vs 2026年問題の構造的違いが5分でわかる
・サプライヤー側が手配した運送契約も9万トン計算に含まれるという「調達の盲点」が理解できる
・調達担当者として明日から取れる3つのアクションがわかる

CLO義務化って、物流部門の話ですよね?
調達には関係ないのでは?

それが、発注ロットや調達リードタイムを決めているのは調達部門。完全施行された今、「物流の話だから」と目をそらしている余裕はもうありませんよ。

「CLO義務化? それって物流部門の話でしょ」——私も去年まで、まさにそう思っていました。

ところが改正物流効率化法の中身を読み込んでみたら、背筋がひんやりしたんです。発注ロットを決めているのは誰か。調達リードタイムを設定しているのは? 仕入れ量を管理しているのは? 全部、調達部門ですよね。完全施行された今、「物流の話だから」と目をそらしている余裕はもうありません。


目次

2024年問題との「決定的な違い」——今度は荷主が規制される番

結論から言います。2024年問題はドライバーへの規制、2026年問題は荷主への規制。ベクトルが違います。

「物流2024年問題」は覚えていますか? 2024年4月に始まった、トラックドライバーの時間外労働を年960時間に制限するルール。あの影響で輸送コストがじわじわ上がり、「運べない」リスクが現実になりました。私の周りでも「サプライヤーから急に輸送費の上乗せ請求が来た」「納品日が守れない案件が増えた」という声が相次いだのを覚えています。

でも、正直な話、ドライバーを規制しても物流の効率化はなかなか進まなかった。なぜか? 荷主側の行動が変わらなかったからです。少量多頻度の発注を続け、荷待ちを平気で発生させ、積載率を低いまま放置してきた。やっぱり、供給側だけ締めても限界があったわけですね。

国土交通省はそこに目をつけました。

項目2024年問題2026年問題
規制対象運送事業者・ドライバー特定荷主(年間9万トン以上)
義務内容労働時間上限(年960時間)CLO選任・計画提出・定期報告
施行時期2024年4月2026年4月(義務化)
罰則6ヶ月以下の懲役 or 30万円以下の罰金最大100万円以下の罰金(段階的措置あり)
調達への影響輸送コスト上昇・供給遅延荷主責任化・積載率改善義務

つまり、今まで物流の問題は「他人事」でした。2026年からは「自分ごと」になる。これが決定的な違いです。


CLO義務化の全貌——誰が、何を、いつまでに

CLO(Chief Logistics Officer)。日本語では物流統括管理者。一言で言えば「物流を経営レベルで管理する責任者」ですが、ここで結構大事な注意点があります。

法律が求めるCLOは、「現場の物流担当者」ではないんです。

法律の定義では「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」。
これは実質的に取締役や執行役員クラスを指しています。担当部長レベルをCLOに充てると、選任要件を満たさない可能性がある。実際のところ、ここが多くの企業にとって最大のハードルだと思います。

特定荷主の基準と3つの義務

特定荷主の基準:前年度に年間9万トン以上の貨物を輸送した事業者。特定荷主・特定連鎖化事業者(フランチャイズ)あわせて全国で約3,200社が該当すると推計されています(国土交通省)。

  1. CLO選任:未選任で100万円以下の罰金。届出を怠った場合は20万円以下の過料
  2. 中長期計画の提出:未提出で50万円以下の罰金。取り組みが不十分な場合は勧告→社名公表→命令→命令違反で100万円以下の罰金
  3. 定期報告:未提出・虚偽報告で50万円以下の罰金

CLOに求められる役割と権限

ここで一つ、脱線させてください。欧米ではCLOという肩書き、CEOやCFOと並ぶ役員職として確立されています。でも日本では「物流は現場の仕事」という空気が根強い。

CLOには調達・生産・販売・在庫管理を横断する全社最適化の権限が求められます。「物流現場の管理者」ではなく「物流戦略の経営責任者」という位置づけ。だから役員クラスなんですね。

施行スケジュール
  • 2025年4月:全荷主・物流事業者に努力義務化
  • 2026年4月:特定事業者に義務化
  • 2026年10月末:中長期計画の提出期限
  • 毎年度提出が基本だが、変更がなければ5年に1度(提出期限は7月末)

「誰をCLOに充てればいいのか分からない」そのようなお悩みもあると思います。
形式的に役員の名前を当てはめるだけでは計画の策定能力が伴わないリスクもあります。形だけのCLOは、設置しないのと同じくらい危険だと個人的には感じています。


「うちは関係ない」が危険な理由——入荷も9万トンに含まれる

「うちは9万トンも輸送していないよ」。

そう思った方に、一つ確認させてください。あなたの会社は仕入れをしていますか? していますよね。

実はこの法律、出荷だけが対象ではありません。サプライヤが運送契約している入荷(仕入れ側の輸送)も含まれるんです。ここが調達担当者にとっての最大の盲点でしょう。

法律上、特定荷主は2種類に分けられています。

  • 第一種荷主:自ら運送事業者と運送契約を締結して貨物を運送させる者(主に発荷主)
  • 第二種荷主:他の事業者が雇用しているドライバーから貨物を受け取る/引き渡す者(主に着荷主)

製造業の調達担当者であれば、原材料や部品の仕入れ輸送量を合計したとき、9万トンを超えている場合があります。「出荷は物流部門が管理しているから関係ない。でも入荷は調達の担当範囲」——そう考えると、特定荷主に該当するかどうかは完全に調達部門の問題でもあるわけです。

「でも9万トンって相当な量じゃない?」と思うかもしれません。

やってみてください。精度は低くても「明らかに対象外」「ボーダーライン上」「おそらく対象」の3段階くらいの感触をつかみましょう。まずは物流担当部門に確認を入れることが先決です。

それから、9万トン未満であっても油断はできません。取引先の運送会社が特定物流事業者として規制対象になれば、輸送遅延や値上げ要求という形で間接的な影響を受けることになります。

では、これが調達部門の仕事にどう影響するのか。3つの視点で整理していきましょう。


調達部門に直撃する3つの影響

CLOが設置されると、調達部門の「当たり前」が変わる可能性があります。

影響①:発注行動が積載率KPIの「共同責任」になる

少量多頻度発注は、トラックの積載率を下げる。理屈としてはわかっていても、「納期短縮のためにJITで発注するのが調達の仕事」という文化がある職場では、なかなか変えられないものです。

私自身、JIT前提の発注を何年も続けてきました。在庫を持つことへの拒否反応が体に染みついている。でもCLOが設置されると、話が変わります。CLOには調達・生産・販売等の関係部門間の連携体制を構築する役割が定められていて、「なぜこの発注頻度なのか」「ロットを増やせないのか」という問いが調達部門に来るようになる。

今まで調達の内側で完結していた発注行動が、物流KPIとセットで評価される時代に入るんです。

船井総研ロジ(現:船井総研サプライチェーンコンサルティング)が2025年3月に行った調査では、約6割の企業が自社の荷待ち時間を把握していないことが分かっています。まず数字を持つこと。何より先決ではないでしょうか。

影響②:サプライヤー評価に「L」が加わる時代

従来のサプライヤー評価はQCD(品質・コスト・納期)が基本でした。でも物流2024年問題以降、「運べない」サプライヤーが増えていることを実感している方も多いはずです。

2026年問題以降、物流能力の低いサプライヤーは、その会社自体がリスク要因になり得ます。輸送手段を確保できない。荷待ち時間が長い。積載率が改善されない。そういうサプライヤーとの取引は、将来的に調達コストを押し上げる要因になるでしょう。

個人的には、評価軸をQCDからQCDL(Logistics)へ拡張するタイミングが来ていると考えています。

「サプライヤーの物流能力まで調達が評価するの?」。冷静に考えてみてください。モノが届かなければ、品質もコストも納期も意味がない。Lは追加項目ではなく、QCDの前提条件な気がしませんか。

影響③:JIT前提の調達リードタイムに見直し圧力

JIT(ジャスト・イン・タイム)は在庫コストを最小化する優れた考え方です。ただ、現実には輸送頻度を増やし、1便あたりの積載率を下げるという副作用があります。

「在庫コストを増やしてでも発注頻度を下げる」か「JITを維持したまま物流コスト上昇を受け入れる」か。このトレードオフを調達部門が真剣に考える時代が来ました。どちらが正解かは会社によって違います。ただ、少なくとも「考えていない」ことはもう許されないでしょう。

調達部門向けの物流KPI設計と、サプライヤー評価への物流指標組み込み方法については、実務的な話になるので改めて掘り下げます


調達担当者が明日からできること3選

義務化の話はわかったけど、調達担当者として具体的に何から始めればいいの?

まずはコストゼロでできる3つのアクションから。専用システムも不要、明日からすぐ始められますよ。

「義務化への対応」というと、システム投資やCLO選任など大きな話に聞こえるかもしれません。でも調達担当者として今すぐできることは、実はかなりシンプルです。

アクション①:自社の年間仕入れ重量を概算把握する

購買データを開いて、昨年度の仕入れ金額上位品目について「単価×数量×平均単重」を計算してみてください。専用システムは不要。Excelで粗い試算を作るだけでいいんです。「明らかに9万トンを超えている」のか「どうやら超えていない」のか——その感触だけで、今後の動き方はまったく変わってきます。

アクション②:主要サプライヤーへの確認メールを送る

「貴社では物流2026年問題への対応をどのようにお考えでしょうか」という一文を、既存の連絡のついでに入れてみましょう。返答の内容で、そのサプライヤーの意識レベルとリスクが見えてきます。

サプライヤーが対応できずに物流コストを急に転嫁してくる前に、状況を把握しておく。先手を打つだけで、後の交渉はずっと楽になりますよ。

アクション③:社内の物流担当部門とCLO候補役員に情報共有する

調達部門から物流部門へ「物流2026年問題への対応、進んでいますか?」と問いかける。これが全てのスタートになります。

問題提起は誰でもできる。一人で全部やる必要はなく、まず巻き込むことが大事です。特に「役員クラスのCLO選任」という話は調達担当者が勝手に動ける領域ではありません。経営判断が必要な話を、適切なタイミングで上に届けること。それが調達担当者にできる最大の貢献かもしれないと、私は思っています。


まとめ:物流2026年問題は「調達の仕事」の定義を変える

冒頭の問いに戻ります。「CLO義務化は物流部門の話だよね?」——いいえ、調達部門に直撃する話でした。

2026年問題を整理すると、3つのポイントに集約できます。

物流2026年問題の要点まとめ
  1. 2024年問題との決定的な違い
    ドライバー(供給側)への規制から荷主(需要側)への義務化へ。今回は「荷主の番」
  2. 調達部門への直接インパクト
    取引先の運送契約も9万トン計算に含まれる。発注行動・サプライヤー評価・JIT戦略のすべてに影響が及ぶ
  3. 明日からできる3つのアクション
    ①自社の仕入れ重量を概算把握、②サプライヤーへの確認、③社内への問題共有

物流コストが上がり続ける時代に、どう立ち回るか。制度に振り回されるのではなく、制度をきっかけにサプライヤー評価を見直し、調達戦略を一段上げる。そういう使い方ができる人が、結果として一番得をすると思いませんか。

2026年問題への対応で「調達部門から動き始めた」企業と、「物流部門に任せておいた」企業。1〜2年後に積み上がる差は、かなり大きくなるはずです。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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