通常単価とまとめ買い単価、まとめ買いする数量、在庫を抱えるあいだの保管費と資金コストから、まとめ買いが損か得か(正味メリット)と、何ヶ月以内に使い切れば得になるか(損益分岐となる消費期間)を計算します。
数字を入れると、下にまとめ買いの正味メリットが表示されます。入れた数字は、どの割引率で得と損が入れ替わるかもグラフで見られます。
横は割引率、縦は正味メリットです。ゼロの線より上が得、下が損。赤い点が損益分岐、紺の点が今の入力です。今の点が赤い点より右にあれば、まとめ買いは得になります。
まとめ買いの損益分岐とは
まとめ買いをすると、1個あたりの単価は下がる。
ところが、まとめて買った分は使い切るまで在庫として抱えることになり、そのあいだ倉庫代や劣化といった保管費と、在庫に寝ているお金の資金コスト(金利)がかかり続ける。
つまり、値引きで浮いたお金と、在庫を持つことで増える費用が、裏側で綱引きをしている。
この2つがちょうど釣り合う割引率が損益分岐で、そこより大きく値引きされていればまとめ買いは得、届かなければ損になる。使い切るのが速い品目ほど在庫を持つ費用は小さくなり、損益分岐となる割引率も下がる。
値引き率だけ見ると見落とすもの
まとめ買いの判断で「1個あたりいくら安くなるか」だけを見ると、在庫を抱える側のコストを丸ごと見落とす。値引き率に飛びつく前に、次の4点を差し引いて考える。
- 在庫金額に対してかかる維持費。倉庫の賃料、保険、時間とともに進む劣化、そして在庫に寝る資金の金利。このツールではこれらをまとめて在庫維持費率として扱う。
- 在庫に寝ている運転資金の金利は、伝票には出てこないので、いちばん忘れられやすい費用になる。
- 平均在庫は満タンの数量ではなく、使うにつれて減っていくため、およそ半分の金額で効いてくること。
- 長く持つほど高まる、劣化や陳腐化、品切れによる入れ替えのリスク。
診断士バイヤーの読み解き
まとめ買いが得か損かは、値引き率そのものよりも「その数量を何ヶ月で使い切れるか」で決まる。
使い切りが速ければ、損益分岐となる割引率は小さくなり、少しの値引きでも得になる。
逆に、動きの遅い品目は、大きな値引きでも損になりやすい。値引きの大きさに目を奪われると、動きの遅い品目を大量に抱え込み、倉庫と資金を長く縛ってしまう。値引き率と在庫の回転の速さは、いつも一緒に並べて見る。
このツールの損益分岐となる割引率と、今の割引率を見比べれば、その品目がどちら側にいるかがその場で分かる。交渉のコツは、相手の提示する値引き幅を、自社が使い切れる速さを考慮して評価すること。
使い切れないロットの値引きは、帳簿の外で在庫維持費として返ってくる。損益分岐となる割引率を先に押さえておけば、どこまでの数量なら受けてよいかを、その場で数字で示せる。
この計算の前提と限界
この計算は、在庫が消費とともに直線的に減っていくとみなし、平均在庫をまとめ買い数量のちょうど半分として単純化している。実際の使い方が前半に偏る、後半に偏るといった波は反映しない。
また、劣化や陳腐化による値下がり、倉庫の空きスペースの制約、品切れしたときの入れ替えの手間といった費用は、この計算には含めていない。
在庫維持費率には、自社が実際に負っている維持費(倉庫代・保険・金利など)の年率を入れる。
割合で見積もりにくいときは、総額で入れる方に切り替えて、年間の金額そのものを入れてもよい。
ここで出た正味メリットは、こうした前提のうえでの目安なので、金額が分岐点の近くにあるときほど、含めていないリスクまで含めて総合的に判断する。