ナフサ・クライシス2026:石油化学系資材が「買えない」時代に、バイヤーが今すぐ取るべき3つのアクション

サプライヤーから「受注できません」という一言を受けたことはありますか?

2026年春、国内の調達現場でその現実が起きています。2月末にホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に入り、プラスチックやゴム、塗料など石油化学系資材の原料となるナフサの調達が急激に逼迫しています。

価格高騰にとどまらず、モノ自体が手に入らない事態が広がっています。

値上げならまだしも、「そもそも買えない」なんて……
どう動けばいいんだ。

こんな方におすすめの記事です
・石油化学系資材(プラスチックやゴム、塗料など)を調達している方
・サプライヤーから受注停止や供給制限の連絡を受けた方
・値上げ対応だけでなく「入手不能」への備えを考えたい方

この記事を読むと、次の3つが得られます
・いま石油化学系資材で何が起きているかの全体像
・焦って大量発注すると逆効果になる理由と、その回避法
・調達担当者が今週中に着手できる緊急3アクション

現役バイヤー20年・中小企業診断士の視点から、ナフサ・クライシスの実態と現場で動かせる打ち手をお伝えします。

目次

石油化学系資材で今、何が起きているのか

連日ニュースを賑わせているナフサですが、この事件の前まで言葉になじみのない方もいらっしゃったのではないでしょうか。

ナフサとは、プラスチックやゴム、塗料の原料となる石油化学の基礎原料です。ナフサからエチレン(合成樹脂や合成ゴムのもと)がつくられ、製品へと姿を変えます。ナフサが詰まれば、川下の石油化学系資材すべてが連鎖して詰まります。

日本のナフサ輸入の大半は中東に依存しています。その輸送の玄関口であるホルムズ海峡が2026年2月末に事実上の封鎖状態となり、供給の糸が一気に細くなりました。

結果として何が起きたか。2026年3〜4月にかけてナフサ価格は前年比で5割超の高騰を見せ、4月には7割超まで上昇したとも報じられています。

国内の在庫は月間消費量の数週間分程度まで細り、国内のエチレン製造設備も半数超が減産を余儀なくされているとされます。

受注停止の動きもすでに表面化しています。住宅設備や樹脂部材を扱う複数の素材メーカーが、2026年春にかけて相次いで受注停止や供給制限を発表しました。帝国データバンクの調査では、製造業の約3割にあたる約4万7,000社が調達リスクにさらされていると報告されています。

いま起きていること(要点)
  • ナフサ価格は前年比5割超、4月には7割超まで上昇したと報じられている
  • 国内在庫は月間消費量の数週間分まで減少、エチレン製造設備の半数超が減産
  • 製造業の約3割(約4万7,000社)が調達リスク下にあると報告(帝国データバンク)

なぜナフサ逼迫が「値上げ」でなく「入手不能」を招くのか

正直な話、価格が上がるだけなら交渉や予算で対処できます。問題は「買えない」という状況です。これはどこから来るのか。

野村総合研究所は流通が「目詰まり」する原因として、構造的な問題を指摘しています。なかでも現場のバイヤーが重く受け止めるべきは、「買い急ぎと過剰備蓄が流通を圧迫している」という指摘と、「総量は確保できても種類が合わない」という盲点です。

供給が不安定になると、各社が「とりあえず多めに発注」をかけます。
もしかすると、あなたも、なくなると思って多めにゴミ袋を買いだめされているかもしれません。

その結果、流通在庫が特定の品目で枯渇します。石油化学系資材全体として総量では流通しているのに、自社が必要とする規格や品番が入手できないのです。

いま焦って大量発注をかけると、あなたの買い急ぎが供給不足の一翼を担い、他社の調達を妨げ、他社も買い急ぎ、在庫を積み・・・。巡り巡って自分の首を絞めます。

分かってはいるけれど、困るのは自社。欠品で怒られるのは自分。他の誰も責任をとってはくれません。

こうした供給混乱への備えは、平時のリスク管理の延長線上にあります。サプライチェーンリスク管理の基本は、こちらの記事でも解説しています。

バイヤーが今すぐ取るべき3つのアクション

では実際に何をすればよいのか。
以下のアクション3つは独立した作業ではなく、アクション1で得た情報を2の社内判断に渡し、その結論を3の代替検討につなげる一連の流れです。

アクション1:サプライヤーへの「供給状況ヒアリング」を今週中に実施

まず着手すべきは、現在のサプライヤーとの対話です。私自身、過去の供給ショックで「サプライヤに聞いておけば先手を打てる」と痛感した項目を、以下の5つに絞りました。

  • 現在の在庫量(自社向けに確保可能な数量)
  • 発注受付の状況(現時点で新規受注が可能か)
  • 次回入荷予定(時期と数量の見通し)
  • 代替品・代替グレードの有無
  • 中期的な納期リスクの見通し

危機時には「他社顧客への供給優先度」「割当(アロケーション)の方針」も足して聞くと精度が上がります。確保可能量が自社需要のxxヶ月分を切るなら、その品目はアクション3の代替材検討に即進める。基準を決めて、勘に頼らない線引きをすべきです。

アクション2:社内への「リスク共有と優先順位付け」

サプライヤーの状況が把握できたら、次は社内への情報共有です。
設計部門や生産管理、製造ラインとの連携が、この局面では命綱になります。

具体的には「どの製品や部品に石油化学系資材が使われているか」を棚卸しします。
有効なのは、影響品目をABC分析(金額・重要度で品目をA/B/Cに区分する手法)で並べ、売上寄与の大きいAランク品から守る順番を決めるやり方です。受注残と在庫水準を横断で見て「どこから守るか」を決めます。

現場感覚で言うと、ここで一番苦労するのが社内調整です。製造ラインが止まるまで危機感を持たない部門は必ずあります。だからこそ調達部門で抱え込まず、Aランク品の供給リスクを数字で見せて早めに巻き込むのが現実的です。

アクション3:「代替材・代替サプライヤー」のリストアップ開始

中長期対応として今から動くべきが、代替品の選定です。中東以外のルートからの代替調達は始まっていますが、迂回ルートに切り替えれば輸送日数の増加と燃料費の上昇は避けられないと見られます。コストとリードタイムの両面で、調達条件は確実に変わります。

ただし、代替材への切り替えで、時間のかかる品質保証プロセス(初期評価からサンプル確認・設計承認・量産試験に至る工程)を省いてはいけません。

急ぎたい気持ちはわかりますが、経験上ここを飛ばすと後工程のトラブルが倍になって返ってきます。
候補のリストアップと初期評価までは今すぐ動けますが、採用判断はこの評価を経てから行ってください。

ナフサ逼迫は「特殊ケース」で終わらない——中長期の視点

「ホルムズが再開通すれば元に戻る」と考えているなら、それは楽観的すぎます。

中東依存という構造は、一朝一夕には変わりません。動き出した代替ルートは、輸送コストもリードタイムもかかり、地政学リスクまで加わります。

一方で、封鎖が解除されても価格と流通が平時に戻るには時間がかかると見られます。当面は中東依存が続く前提で「つなぎの調達体制」を整えるのが現実的です。

政府も動いています。経済産業省は2026年4月30日に「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」を発表しました。ただ、これはマクロの話。在庫が数週間分まで減少する現状で、個別企業が「国の対策待ち」でいられる余裕はありません。

簡単に試算すると、石油化学系資材が調達費の2割を占める部門なら、価格が5割上がれば調達費全体が1割押し上げられます。

代替材の採用やサプライヤー切り替えを、コストと品質責任の両面で調達部門が主導していく必要があります。そのために、経営議題に乗せる動線をつくっておく必要があります。

建設や物流、包装の資材でも複数企業が相次ぎ値上げを発表しており、引き上げ幅は2桁%に及ぶとも伝えられています。値上げは受け入れるか断るかの二択ではなく、代替戦略と組み合わせながら交渉する必要があります。

まとめ

今回お伝えした3つのアクションを、動き出す順番で再確認します。

  • アクション1:今週中に主要サプライヤーへ供給状況のヒアリングを入れ、5項目を確認する
  • アクション2:今のうちに石油化学系資材の影響範囲を社内で棚卸しし、設計や生産部門と優先順位を共有する
  • アクション3:今日から代替材と代替サプライヤーのリストアップを始める(品質保証プロセスは省かない)

特に「アクション1のヒアリング」は、メール1本送るところから始められます。
「在庫がなくなってから動く」では遅すぎ、「焦って買い急ぐ」と過剰在庫になる。それが供給難での調達の難しさです。

管理職の方は、部下と「自社の石油化学系調達依存度は何%か」「同じ事態が再来したら最初に詰まる品目はどれか」を1on1で問い直してみてください。代替材採用やサプライヤー切替の判断は管理職に上げるエスカレーション事項だと現場にも共有しておくと、動きが早くなります。

焦らず、でも迷わず動く。それがこの荒波の局面でのバイヤーの仕事です。

中東情勢と化学品BCPの関係をもう少し押さえたい方は、関連記事「中東リスクと化学品サプライチェーンのBCP」と「値上げラッシュへの調達対応」もあわせてご覧ください。

調達交渉の実践スキルを体系的に身につけたい方は、Udemy講座「調達歴20年現役バイヤーが教える!明日から使える 資材調達コスト削減交渉術」もご参照ください。危機局面での交渉術も解説しています。

この記事を書いた人

大手電機メーカーの現役バイヤー(調達歴20年超)。中小企業診断士。Udemy講師。現場の実務と経営の視点で、資材調達の「なぜ?」を解き明かします。

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