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【海外調達】現地の優良サプライヤーを発掘・育成する5つのステップ

海外調達を任されたけど、何から手をつければいいんだ…?
失敗したらどうしよう…

大洪水でサプライチェーンが寸断された際、私は初めての海外調達担当として、代替サプライヤーを探しに隣国へ飛びました。
あの時の焦りと不安は今でも忘れられません。

かつて海外調達は、安い部品を探すのが主な目的でした。
グローバル化と円高が押し寄せ、日本国内でのものづくりが限界だったからです。

今はグローバル化がさらに複雑化し、コストよりも企業の生命線を守る戦略的な取り組みとなりました。

こんな方におすすめの記事です

・海外調達の担当になったが、具体的な進め方がわからず不安な方
・中国一辺倒のサプライチェーンに、漠然としたリスクを感じている方
・コスト削減だけでなく、企業の競争力を高める戦略的な調達を実現したい方

この記事で得られること

・20年の経験に基づく、失敗しない海外サプライヤーの具体的な見つけ方
・机上の空論ではない、明日から使える体系化された5つのアクションプラン
・あなたの市場価値を飛躍的に高める、戦略的バイヤーとしての思考法

目次

1. 【絶望からの教訓】すべては戦略(計画)から始まる

海外調達で最も重要なのは、探索や交渉のテクニックではありません。
「どの国の、どんな会社を狙うか」という最初の戦略設計です。

まずは候補を広く探さないと始まらないのでは?

やみくもに大海へ漕ぎ出しても、嵐に巻き込まれるだけ。
どの海域(国)で、どんな魚(サプライヤー)を釣るのか。

そのための海図(戦略)が何よりも先に必要なのです。

中国で新規メーカーを開拓した時、チームメンバーの全員が製品販売期限の納期と、コスト削減のプレッシャーから、安い見積もりだけで拙速に判断してしまいました。
結果は散々で、最終的に量産開始が遅れ、機会損失・多額の経済的損失を会社に与えてしまいました。

まず動き出すより先に、戦略を考えて動く必要があります。

調達品の戦略マッピング

まずは自社の調達品を「部品の重要度」と「需要の変動性」でマッピングしてみましょう。

需要が安定的需要が変動的
重要度:高戦略的パートナーシップ
(例:エンジン部品)
→長期契約、共同開発
リスク分散(デュアルソーシング)
(例:半導体)
→複数社購買、在庫管理
重要度:低効率化追求
(例:標準的なネジ)
→ボリュームディスカウント
スポット購入
(例:試作品の部品)
→短期的な価格交渉

例えば、重要度が高く需要が安定している部品なら、コストメリットのある海外メーカーと長期的なパートナーシップを築きつつ、万一の際に備えて国内にもバックアップの取引先を持つ「デュアルソーシング」が有効な戦略となります。

本当に、この部品を海外調達しなければならないのか、自問してみましょう。

2. 【意外な落とし穴】出会いはデジタルとアナログのハイブリッドで

戦略という羅針盤を手に入れたら、次はサプライヤーの探索です。

本当に優良なサプライヤーは、デジタルな場にあまり情報を出していないケースも少なくありません。
玉石混交のネット情報だけで判断するのは、リスクが高すぎます。

そこで、デジタルの網羅性と、アナログの信頼性を掛け合わせたハイブリッド式がおすすめです。

ハイブリッド探索術

デジタルの活用(網を広げる)

  • B2Bプラットフォームで広く候補をリストアップ
  • AIを活用したソーシングツールで情報収集を効率化

アナログの活用(確度を高める)

  • JETRO(日本貿易振興機構)、商工会議所:無料で使える最強の公的リソース
  • 国際展示会:ハノーバーメッセやCESなど、技術力のある企業が世界中から集まる人脈:既存の信頼できる
  • 取引先に「どこか良い会社を知らないか?」と聞く

【衝撃の事実】言葉を信じるな!「総リスクコスト」で見極める厳格な評価

有望な候補が見つかったら、次は評価のステップです。
ここでの鉄則は、「相手の言葉を鵜呑みにしない」こと。

失敗しないための必須アクション3つ

・サンプル評価:
 品質だけでなく、対応スピード、コミュニケーションの質もチェック。
 1個のサンプルだけでなく、量産に耐えうるかも確認しましょう。

・工場監査:
 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が徹底されているかを確認

・第三者認証の確認:
 ISO9001は必須、環境・人権認証も重要

単価の安さに騙されるな!「総リスクコスト(TCOR)」の考え方

TCOR = 見積価格 + 輸送費 + 関税 + (生産停止リスク + 緊急空輸コスト + 評判リスクなど)

例1: 1個100円の部品Aと110円の部品B。

部品Aは不良が起こりやすく、1%の確率で生産ラインを8時間停止させます。
その損失額を考慮すれば、トータルコストは部品Bの方が圧倒的に安くなる可能性があります。

例2: 海外輸入部品C

サプライヤからの見積もりは、1個1ドル。日本製の1/3でした。
ところが、その価格はサプライヤの工場出しの価格。
かさばるため、想定以上の航空運賃がかかり、品質不具合対応や出張指導のコストも加えると微妙な買い物になりました。

【不変の真理】取引先と思うな!Win-Winを築くパートナーシップ構築術

契約は、ゴールではなくスタートです。
特に海外のサプライヤーとは、「契約書で揉め事を未然に防ぐ」という意識が不可欠。

必ず押さえるべき重要条項

・準拠法・裁判管轄:
 どの国の法律で、どこで裁判を行うか

・インコタームズ:
 運賃や保険料、リスクの責任範囲を明確化

・不良品対応:
 選別費用や返送費用の責任分担

・支払条件:
 前払い、後払い、L/C(信用状)の使用

【未来への羅針盤】現状維持は衰退!変化し続けるサプライヤーポートフォリオ

一度サプライヤーを選んだら、それで終わりではありません。
現状維持は、緩やかな衰退を意味します。

ポートフォリオ管理の3つのポイント

・定期的なパフォーマンス評価:
 品質、納期、コスト、技術提案力をスコア化

・リスク分散戦略:
 重要部品は複数国・複数社から購入(デュアルソーシング)

・常に新規サプライヤーを探す:
 新陳代謝でサプライチェーン全体の競争力を維持

結論:未来を創る調達担当者へ

海外調達は、決して楽な仕事ではありません。
しかし、それは同時に、企業の競争力を根幹から支え、自らの市場価値を劇的に高めることができる、やりがいに満ちた仕事でもあります。

今すぐできる3つのアクション

1. 担当している調達品を「重要度」と「需要の変動性」でマッピングしてみる

2. JETROのウェブサイトで、業界に関連する海外展示会情報を検索する

3. 現在の主要サプライヤーの国以外で、代替候補となりそうな国を2つ調べる


あなたの挑戦が、会社の、そしてあなた自身の未来を切り拓きます!

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