中国のレアアース規制? 
うちは直接取引してないから関係ないよな…
もし、あなたが少しでもそう思っているなら、この記事を読んでください。
2010年秋、尖閣諸島沖漁船衝突事件をきっかけにレアアース 分離精製の供給が止まったあの時、多くの調達担当者が途方に暮れました。
しかし、今回の中国 レアアース 技術輸出規制はあの時とはワケが違う。
今回の規制は「モノ」から「技術」への転換により、じわじわとサプライチェーン全体を蝕む「見えなき毒」のような、根の深い問題となっていきます。
衝撃のパラダイムシフト – なぜ「モノ」から「技術」への転換が恐ろしいのか
今回の中国政府による輸出規制、多くのニュースでは「レアアースの輸出規制、再び」といった見出しが躍りました。
ですが、現場のプロから見れば、これは全くの別物です。核心は、「モノ(資源)」から「技術(ノウハウ)」へと規制の対象がシフトしたこと。
これは何を意味するのか?
2010年の禁輸騒動は「蛇口を締められた」だけでした。価格は3倍、4倍に跳ね上がりましたが、まだ「カネで解決できる」問題だったんです。
しかし今回は違う。
中国は、レアアースをただの石ころから高性能磁石に変えるための「レシピ」そのものを管理下に置こうとしているのです。
これは、他国が中国の牙城であるレアアースサプライチェーンを模倣・構築することを根本から阻止する、という強い意志の表れに他なりません。
もはやカネの問題ではない。これは「技術覇権戦争」の号砲なのです!
戦慄の外国直接製品ルール – あなたの会社も知らないうちに対象に?
いやいや、うちのサプライヤーはタイやベトナムにある日系企業だから大丈夫だよ
そう思ったあなた、それこそが今回の規制で最も危険な落とし穴です。
この規制の真の恐ろしさは、外国直接製品ルール(FDP)の概念により、中国の国境を越えて適用される可能性があることです。
これは元々、米国が半導体などで中国企業を締め出すために使ってきたロジック。
それを中国がそっくりそのままカウンターとして使ってくる可能性が極めて高い。
【具体例:恐怖のシナリオ】
あなたの会社が部品を調達しているベトナムのA社。
A社は高性能なモーター部品を製造しています。
しかし、その製造ラインで使われているネオジム磁石の合金化技術は、5年前に中国のB社からライセンス供与されたものでした。
この場合、たとえ工場がベトナムにあろうと、製品が「中国のレアアース 技術輸出規制対象技術」を用いて製造されているため、A社がそのモーター部品を日本に輸出する際に、中国政府の許可が必要になる…という事態が起こりうるのです。
絶望と希望のサプライチェーン分析 – 我々が依存する中国の「本当の強み」
では、我々は具体的に中国の何に依存しているのか?感情論ではなく、数字で見てみましょう。
よく「レアアースの埋蔵量は中国が世界一」と誤解されがちですが、それは事実ではありません。
問題は、掘り出した後の工程、特に「レアアース 分離精製」なのです
世界のレアアースサプライチェーンにおける中国のシェアは以下の通りです:
採掘(鉱石生産量):約69.2%
精錬:約91.4%
永久磁石製造:約93%
(出典:JOGMEC 2025-07-31, CSIS 2025-10-09)
我々が本当に依存しているのは、鉱石そのものではなく、不純物だらけの石ころから純度の高いレアアース元素を取り出す、この分離・精製プロセスなのです。
この工程は、高度な化学的ノウハウと環境対策への巨額な投資が必要で、一朝一夕に他国が真似できるものではありません。
決断のロードマップ – 調達部門が断行すべき短期・中期アクション
では、我々調達 リスク管理担当者は具体的に何をすべきか。
評論家のように嘆いているだけでは、1円の価値も生みません。すぐに行動に移しましょう。
【短期アクション】今すぐやるべき緊急監査(〜3ヶ月)
- サプライチェーンの「健康診断」を断行
主要なサプライヤー、特にレアアース磁石やそれを使用したモーター部品などを扱う取引先に対し、質問しましょう。
・製品に使用されるレアアースの「分離・精製国」
・製造技術に中国由来のライセンス技術は含まれているか?
・代替調達先の確保状況 - Tier2、Tier3まで遡って確認
 
【中期アクション】脱・一本足打法のポートフォリオ構築(〜2年)
- 代替ソースの確保
米国のMPマテリアルズ社、オーストラリアのライナス・レアアース社など、中国国外での一貫生産体制を構築する企業を使用した製品のサプライチェーン構築を急ぎます。 - 「リサイクル」と「代替技術」という選択肢
使用済み製品からのレアアースリサイクル(都市鉱山)の推進や、レアアース代替技術への切り替えを本格検討します。 
結論:今こそ、「戦略的調達」への変革を
今回の中国 レアアース 技術輸出規制は、我々ものづくりに関わる人間にとって、まさに激震です。
しかし、変化を恐れていては生き残れません。
この危機を、旧態依然とした調達業務から脱却する好機と捉えるべきです。
今すぐ、あなたのデスクでできることから始めましょう。
まず、この記事で挙げた「サプライヤーへの質問」を参考に、自社のサプライチェーンの緊急点検を開始してください。
コスト一辺倒だった調達戦略を見直し、技術や地政学リスクを織り込んだ「戦略的調達」へと進化させる。
それこそが、これからの調達部門に課せられた使命です。
サプライチェーン 再構築の未来は、今日のあなたの行動にかかっています。
さあ、一緒にこの難局を乗り越え、真に強靭な日本のものづくりの礎を築いていきましょう!
