また新しい横文字が増えて、正直うんざり…
サステナブル調達って、結局何をすればいいの?
取引先の部長に「SDGsは、君の会社はどう動いておられるのですか?」と問われ、言葉に詰まった不安を思い出します。
この記事で得られる3つのこと
1. 複雑な横文字(SDGs, ESG, CSR)の関係性が、1枚の絵のようにスッキリわかる
2. サステナブル調達が、会社の未来を左右する「攻め」と「守り」の経営戦略であることが理解できる
3. 明日からあなたの現場で実践できる、具体的な第一歩が見つかる
他人事では済まない、サステナビリティという巨大な波
なぜ今、資材調達の現場で「サステナビリティ」がこれほどまでに叫ばれるのか?
それは、サステナブル調達が「守り(リスク管理)」と「攻め(価値創造)」の両面で、企業の未来そのものを左右する、極めて重要な経営戦略になったからです。
ある日突然、最重要顧客である欧州メーカーから会社担当窓口に、「サプライヤー行動規範に関する監査チェックリスト」が届きました。
当然、調査実務は調達部門に下りてきます。
「2ヶ月以内に回答なき場合、取引を停止する可能性がある」という一文を見たとき、またか、勘弁してくれよ、と感じました。
守りの調達:無視できない3つの経営リスク
1. 評判リスク(レピュテーションリスク)
ナイキが90年代に児童労働問題で大規模な不買運動に発展したことや、近年ファーストリテイリングが人権問題で批判を浴びたことは記憶に新しいでしょう。
SNSで瞬時に情報が拡散する現代、サプライチェーンの末端で起きた人権侵害や環境破壊が、一瞬にして自社のブランド価値を地に堕とす時代です。
2. 規制リスク
EUでは「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」が、ドイツでは「サプライチェーン・デューデリジェンス法」がすでに動いています。
これらは、一定規模以上の企業に対し、自社だけでなくサプライチェーン全体での人権・環境リスクの特定と対応を義務付ける法律です。
3. 操業リスク
異常気象による大規模な洪水で、タイの工業団地が操業停止に追い込まれたニュースを覚えていますか?
気候変動は、サプライヤーの工場を直接ストップさせ、私たちのサプライチェーンを寸断させる物理的なリスクになっています。
「法律だ、規制だと言われると、なんだか息苦しいな…」と感じる気持ち、よく分かります。
でも、見方を変えれば、これはチャンスなんです。
ルールが明確になったということは、やるべきことがハッキリしたということ。
競合他社がまだ対応に戸惑っているうちに先手を打てば、それは圧倒的な優位性になります。
攻めの調達:企業価値を高める3つのチャンス
1. 資金調達力が上がる(ESG投資)
コロナ前、世界の投資家たちは「ESG(環境・社会・ガバナンス)」という物差しで、投資先企業を厳しく選別していました。
サプライチェーン全体でサステナビリティに取り組む企業は、「リスク管理能力が高く、持続的に成長できる」と評価され、巨額の投資マネーが集まりやすくなったのです。
現在は落ち着いた冷静さと取り戻しつつありますが、ESGの御旗が下ろされるには至っていません。
2. ブランド価値が向上する
サステナブルな製品やサービスは、高くても消費者に選ばれる時代になりました。
調達部門が主体となって、リサイクル素材の採用や、人権に配慮したサプライヤーの選定を進めることが、会社のブランドイメージを直接的に向上させます。
3. イノベーションが生まれる
サプライヤーを単なる「下請け」ではなく、「パートナー」として巻き込むことで、新たな技術や素材が生まれることがあります。
CO2排出量を削減するという共通の目標に向かって協業する中で、革新的な省エネ技術が開発されるケースも少なくありません。
スッキリ整理!SDGsとESGの羅針盤
会社の担当部門(たいがい経営企画など)から「CSR調達を進めろ」と指示され、とりあえず環境認証を持つサプライヤーのリストを作って報告したら、「それだけじゃないだろ!人権は?BCPはどうなんだ?」と、他にも要求されることがあります。
比較的新しい概念。依頼する方も、具体的に何をしてほしいのか明示しないから、こういう失敗をするんですね。
サステナビリティ関連用語の関係図
用語の関係性をスッキリ理解
サステナビリティ(持続可能性) :
すべてを包む、一番大きな概念。「環境・社会・経済」の三方よしで、未来もずっと続いていける世界を目指そう、という考え方
SDGs(持続可能な開発目標) :
サステナビリティという壮大なゴールに向けた、具体的な「17の目標と169のターゲット」。世界共通の「やることリスト」
ESG(環境・社会・ガバナンス) :
企業がサステナビリティに取り組んでいるかを評価するための「評価項目」や「視点」
CSR(企業の社会的責任) :
企業がサステナビリティを実現するために行う、具体的な「企業活動」そのもの
そして「サステナブル調達」とは、このCSR活動の中でも、特に調達・購買部門が主導する取り組みを指します。
サステナブル調達 vs CSR調達・グリーン調達
| 用語 | 主な焦点 | 考え方 |
|---|---|---|
| グリーン調達 | 環境 | 環境負荷の少ない製品やサービスを優先的に購入する活動 |
| CSR調達 | 環境+社会 | 環境に加え、人権や労働環境、コンプライアンスなど、より広い社会的責任をサプライヤーに求める活動 |
| サステナブル調達 | 環境+社会+経済 | CSR調達の範囲に加え、サプライヤーの経営安定性や、共に成長していくパートナーシップといった経済的な側面も重視する、最も包括的な考え方 |
資材調達が最も貢献できるSDGsはこれだ!
SDG 8:働きがいも経済成長も
サプライヤーに不当な買い叩きをせず、適正な価格・納期で取引をすること。
サプライチェーン上で働く人々の人権や労働環境に配慮すること
SDG 12:つくる責任 つかう責任
リサイクル材を積極的に採用したり、環境負荷の高い化学物質の管理を徹底したり、廃棄物を削減する取り組み
SDG 13:気候変動に具体的な対策を
サプライヤーと協力して、製造工程や輸送におけるCO2排出量を削減する取り組み
今日から動ける、実践への小さな一歩
ここまで読んで、サステナブル調達の重要性と全体像が掴め、少し期待や高揚感が湧いてきたのではないでしょうか?
完璧を目指さないこと!
いきなり「サプライヤーのCO2排出量を算定するぞ!」なんて壮大な目標を掲げても、挫折するのが目に見えています。
まずは、自社の立ち位置を知ることから始めましょう。
【知る】自社とサプライヤーの現状を把握する
まずは、社内のルールブックを再確認してみましょう。
会社のWebサイトのサステナビリティに関するページに、「調達方針」や「サプライヤー行動規範」といった資料がPDFで公開されているはずです。
【調べる】リスクの高い領域に目星をつける
次に、世の中の動きを少しだけ調べてみます。
「紛争鉱物」や「PFAS/PFOS」「パーム油 人権問題」といったキーワードで検索してみると、どんな国や地域、原材料にリスクが潜んでいるか見えてきます。
【動く】小さなアクションを起こしてみる
最後は、ほんの小さな行動です。
今日の学びを、チームの同僚に「こんな記事読んだんだけどさ…」と話してみる。
調達部門のサステナビリティ担当に「社外からの問い合わせどれくらい来てる?」と聞いてみる。
主要サプライヤーとの定例会議で、「最近サステナビリティ関連で何かお困りごとってありますか?」と問いかけてみてください。
あなたの未来を変える第一歩を踏み出しませんか?
この変化の大きな波を「また仕事が増える。うんざり…」という脅威と捉えるか、
「自分の価値を高めるチャンス!」と捉えるかで、あなたの5年後、10年後のキャリアは全く違うものになるでしょう。
正直私も前者でした。話が大きすぎて、実感が湧かない。
しかし、いざ担当してみると、やはり世界的にホットな業界。
枯れた業界で出会う人とは異なり、さまざまな人、優秀な人、ガッツのある人が多いことが分かりました。
あなたのその小さな一歩が、会社の未来、そして社会の未来を変える、大きな力になるはずです。
