AIだの地政学だの、最近のトレンドは難しすぎて、正直、現場の業務とは関係ないかな…
なんて、ふと頭をよぎっていませんか?
もしそうなら、この記事はまさに、そんなあなたのために書きました。
ASCM(サプライチェーンマネジメント協会)が発表した「2025年サプライチェーン・トレンド トップ10」。
正直な話、レポート原文は英語で、どこから手をつけていいか分かりにくいですよね。
まずは、そのトップ10がどんなものか、一覧で見てみましょう。
【ASCM 2025年 サプライチェーン・トレンド トップ10】
- 人工知能 (AI)
- 世界貿易のダイナミクスと地政学的政策
- ビッグデータと高度なアナリティクス
- サイバーセキュリティ
- アジリティ(俊敏性)とレジリエンス(回復力)
- 可視性とトレーサビリティ(追跡可能性)
- デジタル統合と接続性
- 戦略的ソーシングとサプライヤー管理
- 労働力の進化
- リスク管理
これらはバラバラの現象ではなく、すべて根っこで繋がっています。
今回は、20年以上の調達現場を見てきた経験から、これら10個のトレンドを「資材調達担当者」の視点で、3つの大きな視点に整理しなおして解説します。
視点1. 【衝撃】AIとデータが変える「調達の景色」
まず最初の流れは、テクノロジーの進化です。
これは、トレンド
1位の「AI」、
3位の「ビッグデータ」、
4位の「サイバーセキュリティ」、
6位の「可視性」、
7位の「デジタル統合」
といった、技術がらみの項目。
AIが仕事を奪うって話もありますが、本当なんでしょうか?
AIはもう知識レベルでは人間を超えており、次にできることが増えてきています。
AIの指示のままに使われるのではなく、AIは、調達担当者の「意思決定を助けてくれる、賢い相棒(co-pilot)」にしたいですね。
以下のようなことが、AIにより近い将来できるようになると推測されます。
- 過去の膨大な見積データ、市場の価格動向、為替の動き、なんなら原材料の先物価格までAIが分析して、「この部品の適正価格は、ズバリこのあたり」という精度の高い「見積査定」が瞬時にできるようになる
- 世界中のニュースやSNSのつぶやきから「〇〇国で大規模ストライキの兆候」とか「△△港が嵐で閉鎖」といった情報をAIがリアルタイムで検知し、「あなたの担当サプライヤーA社、納期遅延リスクが80%です!」と先回りして警告してくれる
これ、調達担当者が長年培ってきた「勘と経験」を、データという強力な裏付けでサポートしてくれる動きだと思いませんか?
交渉のテーブルで、めっちゃ強い武器になります。
ウチの会社はまだExcelとFAXがメインだし、AIなんて夢のまた夢…
でも、AI導入の本当の第一歩は、「まずはExcelでもいいから、見積もりデータを一元管理してみる」といった、地道なデジタル化だったりします。
そして、このデジタル化で絶対に忘れてはいけないのが、サイバーセキュリティです。
サプライヤーと図面データをクラウドで共有する仕組みが便利になっても、そこから新製品の情報が漏洩したら…正直、目も当てられない事態になります。
視点2. 【最重要】地政学が迫る「サプライチェーンの組み替え」
2つ目の流れ。これが、今回のトレンドの中で個人的に最も重要だと感じているポイントです。
トレンド
2位の「地政学」、
5位の「アジリティとレジリエンス」、
10位の「リスク管理」。
地政学って、具体的に調達業務にどんな影響があるんでしょうか?
パンデミックや世界各地の紛争を経験して、サプライチェーンの常識は、根本から変わりました。
かつて絶対視されていた「安ければいい」「在庫は極力持たない」という思想は、もはや非常にリスクが高い思想になってしまったんです。
地政学は、もはや「時々起こる海外のリスク」ではありません。
米中対立による突然の関税合戦、特定の国に依存するレアメタルの供給不安…。
これらは、資材調達戦略を考える上での「OS(オペレーティングシステム)」、つまり「前提条件」になりました。
レジリエンスは、要は「打たれ強さ」
特定のサプライヤーが被災したり、特定の国からの輸入が止まったり、そういうパンチを食らっても、会社全体が致命傷にならずに立ち直る力のこと。
アジリティは、要は「身のこなし」
ヤバい!と思ったら、サッと調達先をB社に切り替えたり、設計と相談して代替品を見つけたりする俊敏さです。
あなたの担当品目で、サプライヤーが1社集中(シングルソース)になっているものはありませんか?
それは、まさにこのレジリエンスが低い状態です。
視点3. 【核心】結局は「ヒト」と「パートナー」が未来を決める
そして、3つ目の流れ。
どんなにAIが進化し、どんなに地政学リスクが高まっても、結局、未来を決めるのは「ヒト」です。
トレンド
8位の「戦略的ソーシングとサプライヤー管理」、
9位の「労働力の進化」。
この2つは、まさに私たち調達部門の「心臓部」の話。
AI(トレンド1位)やビッグデータ(3位)といった高価なツールだけを会社が導入して、「はい、これで効率化よろしく」では、絶対にうまくいかない。
それを使いこなし、データを読み解き、地政学を理解し、その上でサプライヤーと戦略的な会話ができる…
そんな「新しい調達スキル」を持った「ヒト」がいないと、宝の持ち腐れになる。
サプライヤーを「下請け」としか見ていないなら、その考えは今すぐ捨てるべきでしょう。
これからのサプライヤーは、リスクや情報を共有し、時には「こんな材料どうですか?」と新しい技術を一緒に生み出す「戦略的パートナー」です。
まとめ:明日からできる「はじめの一歩」
さて、2025年の大きなトレンドを、3つの流れで解説してきました。
「話は分かったけど、なんだか壮大すぎて、明日から何をすればいいか分からない…」
そう感じているかもしれませんね。
- 担当サプライヤーの「リスク」を、まず1社だけ、深く見直してみる
その会社の生産拠点はどこにあるか?(地政学リスクに巻き込まれないか?)
代替できる会社は、本当にすぐ見つかるか?(レジリエンス) - 自分の「スキル」を棚卸しする
AIやデータの話に、正直ついていけてるか?
もし「ヤバい」と感じたら、まずは関連書籍を1冊、通勤中に読んでみるだけでも世界は変わります。 - サプライヤーの担当者と、一度「コスト以外の雑談」をしてみる
「最近、そちらの業界で困っていることは?」
「何かウチで協力できることないですか?」
この小さな雑談が、いざという時の信頼関係に繋がります。
2025年のトレンドは、私たち資材調達担当者に「変化」を強く迫っています。
でも、個人的には、これは調達部門の価値を、経営層や他部門に改めて示す、絶好のチャンスだと思うんです。
「ただ安く買う部署」から、「会社の未来のリスクを管理し、競争力を生み出す戦略部門」へ。
変化の波に飲み込まれるんじゃなく、その波の先頭でサーフィンのように乗りこなす。
そんな戦略的な調達プロフェッショナルを、一緒に目指しませんか!
