海外から資材や部品を仕入れるとき、費用の負担と、輸送中の事故の損害(貨物が壊れたり届かなかったりしたときの責任)を、売り手(輸出者)と買い手(輸入者)のどちらがどこまで負うかを決める国際的な取り決めが、インコタームズです。
このナビは、いくつかの質問に順に答えると、その取引に向いた条件を1つ選び出します。
答えに応じて次の質問が出るので、実際に答えるのは2問から4問です。
質問は、あなた(買い手・輸入者)が「売り手にどこまで任せる条件を提案するか」を考える立場で作っています。インコタームズは売り手と買い手の合意で決まるものなので、最後は相手との交渉で決まります。このナビは、交渉の出発点となる条件の当たりをつけるための目安としてお使いください。
質問に順番にお答えください。答えに応じて次の質問が表示されます。最後に「結果を見る」を押すと、その取引に向いた貿易条件を1つお示しします。答える質問は取引によって2問から4問です。
インコタームズとは何か
インコタームズは、貿易で、費用の負担と、輸送中の事故の損害(貨物が壊れたり届かなかったりしたときの責任)が、売り手から買い手のどこで移るかを定めた国際的な規則です。
国際商業会議所(ICC)が定め、いまの版はインコタームズ2020で、条件は全部で11あります。
契約書に「FCA」「CIF」などと書くだけで、費用と危険の分担のひとまとまりを指せる、貿易の共通言語です。
このナビは、質問に答えると、その取引に向いた条件を1つ選び出します。ただし選び出した条件が最適だと保証するものではないので、下の考え方を読んで、自分の取引に照らして確かめてください。
条件選びで決めているのは2つのことだけ
条件の名前は11個ありますが、選ぶときに決めているのは、突きつめると2つのことだけです。
1つは、売り手にどこまでの費用と作業を任せるか。
もう1つは、輸送中に事故が起きたときの損害を、どこから買い手が負うか(危険がどこで移るか)です。この2つは別物で、ずれることがあります。ここを分けて考えると、名前が多くても迷いません。
1つ目の軸: 売り手にどこまで任せるか
売り手の引き受ける範囲で、11条件は4つのグループに並びます。
買い手の負担が重い順に、Eグループ、Fグループ、Cグループ、Dグループです。
Eグループ(EXW 工場渡し)は、売り手が自社の施設で貨物を渡すだけで、輸出通関から輸送まで買い手が担います。
Fグループ(FCA・FOB)は、売り手が出荷地で貨物を輸送に引き渡すところまでを担い、輸出通関も行いますが、そこから先の国際輸送の運賃は買い手が払います。
Cグループ(CPT・CIP・CFR・CIF)は、売り手が仕向地までの運賃を払います。
Dグループ(DAP・DPU・DDP)は、売り手が仕向地まで運び、輸入通関や関税まで担うものもあります。
EからDへ進むほど、売り手の負担が重くなります。
2つ目の軸: 事故の損害はどこで買い手に移るか
事故の損害を売り手と買い手のどちらが負うか、その分かれ目の場所は条件ごとに決まっています。
EXWは売り手の施設で引き渡した時点、FCA・CPT・CIPは最初の運送人に引き渡した時点、FOB・CFR・CIFは本船に積んだ時点、DAP・DDPは仕向地に着いた時点、DPUは仕向地で荷卸しまで終えた時点です。
いちばん間違えやすいのがCグループです。売り手が仕向地までの運賃を払っても、事故の損害は、出荷地で貨物を輸送に引き渡した時点から、もう買い手が負います。「費用は仕向地まで売り手、事故の損害は出荷地から買い手」という二段構えを、契約前に必ず確かめてください。
海上輸送か、それ以外か
Fグループ(運送人に渡す形)とCグループ(運賃を売り手が払う形)は、海上輸送か、それ以外かで、対になる条件に分かれます。
海上輸送で使うのがFOB・CFR・CIF、それ以外(航空・トラック・鉄道・複合輸送)で使うのがFCA・CPT・CIPです。
事故の損害が移る場所も違い、海上の3条件は本船に積んだ時点、それ以外の3条件は最初の運送人に引き渡した時点です。このナビは、最後に「海上輸送か、それ以外か」をたずねて、この対を選び分けます。
ここで、コンテナ貨物には注意点があります。コンテナは出荷地の港のターミナルで運送人に引き渡すのが実態ですが、海上の条件(FOB・CFR・CIF)は「本船に積んだ時点」を区切りにするため、ターミナルに預けてから船積みまでの数日間、責任があいまいになります。
そのためインコタームズ2020では、コンテナ貨物には、危険の区切りが実態に合うFCA・CPT・CIPを使うよう、ICCが勧めています。
とはいえ実務では、相手先の銀行・保険・通関がこれらで回っているため、コンテナでもFOB・CFR・CIFが慣習で広く使われています。相手の見積りがFOBやCIFでも、費用と損害の分担はFCA・CPT・CIPとほぼ対応するので、あわてる必要はありません。
どちらで契約するかは、相手との交渉と輸送の実態で決めてください。
保険と、CIP・CIFの違い
売り手に貨物保険を付ける義務があるのは、CIP(輸送費保険料込み)とCIF(運賃保険料込み)だけです。
ほかの条件では保険は付かないので、必要なら買い手が自分で手配します。
とくにCグループのCPT・CFRは、運賃は売り手が払っても保険は付かず、事故の損害は出荷地から買い手なので、かけ忘れると事故が全額自己負担になりかねません。
名前が似たCIPとCIFは、2つの点で違います。
1つは使える輸送手段で、CIFは海上輸送だけ(危険は本船に積んだ時点)、CIPはあらゆる輸送手段(危険は最初の運送人への引き渡し)です。
日本語名も、CIPは輸送全般を指す「輸送費」、CIFは船の運賃を指す「運賃」と、この違いを表しています。
もう1つは保険の水準で、インコタームズ2020から、CIPはほぼすべての事故を補償する手厚い水準(協会貨物約款のA相当)が既定、CIFは最低限の水準(同C相当)が既定です。
見積りを比べるときは、保険が入っているか、入っているならどの水準かをそろえてください。
診断士バイヤーの読み解き
20年、買う側で貿易条件を扱ってきて思うのは、インコタームズは「見積価格がどう変わるか」に加えて、「どこまでの手間と、事故の損害の負担を、いくらで引き受けてもらうか」の交渉だということです。
売り手が全部やってくれるDDPは楽に見えますが、関税や輸入の消費税をどう見積もったか裏取りしないと、後から追加を請求されたり、輸入者だけが使える関税の還付を失ったりします。
逆にEXWは、輸出国側の通関まで買い手が背負うので、慣れないうちは思わぬ手間がかかります。そして、いちばん取り違えが多いのがCグループです。「CIFやCIPだから安心」と思っていると、事故のときには損害はもう自分が負う立場だった、ということが起きます。費用の負担と、事故の損害を負う立場は別物だと覚えてください。コンテナなのにFOBやCIFのまま、という契約もよく見ます。すぐ切り替えられなくても、危険の区切りがずれていることは頭の隅に置いてください。
このナビが選ぶのは、向いた条件の当たりをつけるところまでです。
最後は、相手との力関係、輸送の実態、保険と通関の手間を並べて、自分の取引に合う1つを決めてください。
このナビの前提と限界
このナビは、いくつかの質問に答えて向いた条件を1つ選び出す簡易ガイドで、個別の取引への専門的な助言ではありません。
よく使う10条件(あらゆる輸送手段で使えるEXW・FCA・CPT・CIP・DAP・DPU・DDPと、海上輸送のFOB・CFR・CIF)の中から選びます。実際の契約条件は、貨物の種類、相手との力関係、輸送の実態、保険や通関の手間、代金の決済方法など、取引ごとの事情で変わり、専門的な検討が必要です。
選び出した条件が最適だと保証するものではありません。条文の正確な内容はICCが発行するインコタームズ2020の原典で確かめ、最終的な条件は相手との交渉と、必要に応じて貿易実務や法務の専門家への相談のうえで決めてください。
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