資材調達って、結局のところ何が必要なの?営業経験しかないけど大丈夫かな…
資材調達への異動や転職が決まると、期待と同時にそんな不安がよぎりますよね。
私も20年以上前、初めて資材調達に配属された時は「何をどう勉強すれば…」と戸惑ったのを覚えています。
この仕事、外から見るよりずっと奥深く、そして面白いんです。
この記事は、そんな過去の私のような悩みを持つ方に向けて書きました。
専門用語を並べるだけでなく、現場で”ガツン”と役立つ実践的なスキルと、キャリアを加速させる資格を厳選しています。
【結論】資材調達のプロに必要なのは「2種類のスキル」
資材調達の仕事は、単なる「発注屋さん」ではありません。
「会社の利益を生み出す最前線」であり、高度な専門性が求められます。
そのために必要なスキルは、大きく2つのカテゴリーに分けられると私は考えています。
- ソフトスキル(対人・思考系)
交渉力、調整力、情報収集力など、主に「人」や「情報」と向き合うスキル。
これが土台になります。 - ハードスキル(知識・技術系)
コスト分析力、PCスキル、語学力など、主に「モノ・カネ・データ」を扱う専門技術です。
どちらか一方だけでは、プロフェッショナルとは言えません。
両方をバランスよく伸ばすことが重要なんです。
まずは、どんな業務でも絶対に欠かせない「ソフトスキル」から、現場のリアルな話と合わせて見ていきましょうか。
【超重要】現場で生きるソフトスキル4選
ここでは、私が「これがなきゃ始まらない」と断言できる4つのソフトスキルを紹介します。
特に「どう使うか」の具体例に注目してください。
1. 交渉力 (“Win-Win” を構築する力)
どんな場面で?
サプライヤーとの価格交渉、納期短縮の依頼、品質トラブル時の補償交渉など、調達業務の根幹です。
どう使うか?(具体例)
調達の交渉は「値切ること」がゴールじゃありません。
相手の原価構造(どこにコストがかかっているか)を理解し、お互いにメリットのある着地点(Win-Win)を探るのがプロの仕事です。
2. コミュニケーション能力 (“調整力” と “傾聴力”)
どんな場面で?
社内(設計・製造・品証)との仕様調整、サプライヤーとの日常的な関係構築。
設計部門から「この最新部品を使いたい!」って言われたけど、調べたらめちゃくちゃ高くて納期も半年先…
どうしたらいいんでしょう?
そんな時、「無理です」と突っぱねるのが一番ダメ。
設計の「なぜそれを使いたいのか(=要求機能)」を傾聴し、「その機能なら、こちらのB部品(安価で即納)でも代替できませんか?」と代替案を提示し、合意形成を図る。
これが「調整力」です。
設計の「こだわり」と、製造・経営の「コスト・納期」の板挟み。
これが調達担当者の日常茶飯事です(苦笑)。
サプライヤーとの雑談も大事な仕事。
「最近、〇〇(原材料)の高騰が厳しくて…」というポロッと出た本音をキャッチする。
この「傾聴力」が、将来の値上げ交渉の予兆を掴んだり、逆に「今が長期契約のチャンスかも」と気づくきっかけになります。
3. 情報収集・分析力(市況を読む力)
どんな場面で?
新規サプライヤーの開拓、原材料の価格トレンド予測、BCP(事業継続計画)対策。
どう使うか?(具体例)
- 国内だけでなく、海外の展示会情報や業界ニュースを常にチェックし、優良なサプライヤー候補をリストアップしておきます。
- 原油価格や為替(ドル/円)の動向をウォッチし、「この樹脂材料、来月から上がりそうだな…」と予測し、先手を打って発注をかける。
日頃から代替サプライヤーの情報を収集・分析しておく「BCP(事業継続計画)」の重要性が増しています。
何かコトが起こったら、すぐに代替できるように、普段からサプライヤや材料の情報を収集しておく、業界の動向を注視しておく必要があります。
4. スケジュール管理能力(マルチタスク処理力)
どんな場面で?
複数の部品の納期管理、生産計画の変更対応、新規プロジェクトの立ち上げ。
どう使うか?(具体例)
資材調達は、何十社ものサプライヤーと、何百点(!)もの部品の納期を同時に管理します。
月末になると、相当な数のサプライヤからの納期回答と、社内から「あの部品まだ?」「仕様変更になった!」という催促や変更依頼のメールやチャットが怒涛のように押し寄せてくるんです。
- A部品の納入が1日遅れると、製造ライン全体が止まる(=最優先)
- B部品の仕様変更は、来週の会議で調整すればOK(=優先度・中)
といった具合に、瞬時に優先順位をつけてタスクを処理する能力が求められます。
【差がつく】専門性を高めるハードスキル3選
ソフトスキルが土台なら、ハードスキルはあなたの専門性を高め、他者と差をつける武器になります。
コスト分析力(数字で語る力)
どんな場面で?
サプライヤーからの見積書(コストブレイクダウン)の査定、コストダウン目標の策定。
サプライヤーから出てきた見積書、いつもそのまま受け入れちゃってました…
プロは中身を分解します。
プロは中身を分解します。
「なぜ、このプレス加工費がこんなに高いんだ?」
「この材料費、本当に最新の市況を反映してる?」
と論理的に分析するんです。
究極的には、
「この製品の適正価格は、材料費〇円+加工費〇円+管理費・利益〇円=合計〇円のはずだ」
という自社なりの「あるべき価格(Should Cost)」を算出する。
これが最強の交渉の武器になります。
「あるべき価格」を算出するにはどうするか?
例えば、材料費なら「製品重量(設計図面から取得)× 材料単価(市況から取得)」で計算できます。
こうした地道な分析が、感覚ではない「数字に基づいた交渉」を可能にするんです。
PCスキル(Excelを基軸としたデータ活用力)
どんな場面で?
発注データ管理、複数社見積もりの比較、購買実績データの分析、発注・支払処理。
はっきり言います。資材調達は「Excelが使えて一人前」です。
将来はAIが取って代わるかもしれませんが、現時点ではこれが全ての基本。
- まずはExcel:
VLOOKUP / INDEX+MATCH: A社、B社、C社からのバラバラの見積フォーマットを、瞬時に自社の比較表に転記・比較する。これは必須です。 - ピボットテーブル:
これが使えると分析の幅が広がります。
購買実績データを分析し、「どのサプライヤーからの購入額が一番大きいか(=重点交渉先)」を特定したり、「品目別の価格推移」をグラフ化したりします。
Excelに慣れたら、次は「データをどう活かすか」の視点です。
多くの会社では調達基幹システムに購買データが蓄積されています。
このデータを「単なる発注処理」に使うだけではもったいない。
調達基幹システムからデータを抽出し、ExcelやBIツール(データの分析、可視化に特化したツール)で分析し、「この部品、A社とB社に購買が分散してるから、A社に集約すればボリュームディスカウントを狙えるな」といった戦略的な打ち手を考える。
ここまでできて、初めて「データを活用している」と言えるでしょう。
語学力(特に英語)
海外サプライヤーとのメール・会議、英文契約書の確認。
どんな場面で?
海外サプライヤーとのメール・会議、英文契約書の確認。
今はAI翻訳があるから、語学力なんていらないのでは?
そう思う気持ちもわかります。
確かに、メールのドラフトや契約書のたたき台作成において、AIの精度は劇的に上がりました。
それでも、私は「自ら話す力」が重要だと思います。
なぜか?
交渉の最終局面、特に価格や納期で「あと一歩」をお願いする時、AIを通した完璧な文章より、拙くても自分の言葉で熱意を伝える方が、相手の心を動かすことが多々あります。
また、会議の合間の雑談や、会食の席での人間関係づくり(ラポール形成)は、AIにはできません。
TOEICスコアも大事ですが、それ以上に「間違ってもいいから伝えようとする姿勢」が、グローバル調達では最強の武器になります。
【本気で解説】キャリアを加速させる資格5選
スキルはわかったけど、体系的に学ぶには資格も有効?
その通りです。
資格は必須ではありませんが、あなたの知識を証明し、キャリアアップを手助けする強力な武器になります。
簿記(日商簿記2級以上)
・概要: 会社の財務諸表(B/S, P/L)を読むための基本スキル。
・なぜ役立つか?
- コスト分析力の基礎
原価計算(材料費、労務費、経費)の知識が、前述の「あるべき価格」の算出に直結します。 - サプライヤーの経営分析:
サプライヤーの決算書を見て、「あ、この会社、在庫が膨らんでてキャッシュフローやばいかも?」「有利子負債が多すぎるな」といった経営のリスクを分析できます。
おすすめな人:
全ての調達担当者。
特に未経験者、コスト分析を深めたい人。まずはコレから!
調達プロフェッショナル認定資格 (CPP)
・概要:
日本能率協会(JMA)が主催する、調達実務の体系的な知識を問う国内資格。B級(実務者)とA級(管理者)があります。
・なぜ役立つか? :
調達業務(コスト、納期、品質、法律、倫理など)を幅広く体系的に学べます。
自分の経験や知識が「標準レベル」に達しているかを確認するのに最適です。
・おすすめな人:
調達経験3年目前後で、自分の知識を一度整理・体系化したい現役担当者。
貿易実務検定®
・概要:
日本貿易実務検定協会®が主催する、貿易実務の知識と能力を測る検定。(C級〜A級)
・なぜ役立つか?
海外調達(輸入)を行う際、必須となる知識(貿易書類の見方、インコタームズ、関税、関連法規など)を体系的に学べます。
・おすすめな人:
海外サプライヤーとの取引がある(または目指す)人。特に商社やメーカーの国際調達部門にいる人。
ITパスポート試験
・概要:
経済産業省が認定する、ITに関する基礎的な知識を証明する国家試験。
・なぜ役立つか?
現代の調達はデータ分析と切っても切れません。
前述のExcel活用はもちろん、調達基幹システムの理解、情報セキュリティ、最近のDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの動向など、ITの「共通言語」を知っておくことは非常に重要です。
・おすすめな人:
PCスキル(特にExcel以上)に自信がない人、データ分析の第一歩を踏み出したい全ての人。
中小企業診断士
・概要:
経営コンサルタントの唯一の国家資格。
・なぜ役立つか?
調達を「サプライチェーン全体」や「経営戦略」の視点から最適化する能力が身につきます。
また、サプライヤーの経営課題を理解し、改善指導(コンサルティング)を行う際にも役立ちます。
・おすすめな人:
将来的に調達部門のマネージャーや、経営幹部を目指したい視座の高い人。
財務会計、経営、経済、法務、システム、工場や店舗の運営管理、中小企業政策など、幅広い科目を学びます。
独立を考えていなくても、資材調達のキャリアをベースに会社全体を経営の観点で見ることができるので、とてもおすすめです。
とはいえ、資格マニアになっちゃダメですよ。
資格はあくまで知識の証明。大事なのは、その知識を現場で「どう使うか」です。
簿記2級を取っても、サプライヤーの決算書を見なければ宝の持ち腐れですからね。
| 資格名 | 主催団体(例) | 難易度 (私見) | 特徴 | こんな人に おすすめ |
| 日商簿記2級 | 日本商工会議所 | ★★☆☆☆ | 原価計算・財務分析の 基礎。コスパ最強。 | 全員 (未経験者) |
| ITパスポート | IPA (情報処理推進機構) | ★☆☆☆☆ | ITの基礎教養。データ活用の土台。 | 全員(PC 苦手な人) |
| 調達プロフェッショナル(CPP) | 日本能率協会 (JMA) | ★★★☆☆ | 日本の調達実務を 体系的に学べる。 | 経験3年目前後の現役担当者 |
| 貿易実務検定® | 日本貿易実務検定協会® | ★★★☆☆ | 海外調達(輸入) 実務の基礎知識。 | 海外調達担当者 |
| 中小企業診断士 | 国(経済産業省) | ★★★★★ | 経営戦略の視点。 難関国家資格。 | マネージャ・ 経営幹部候補 |
【未経験でもOK】前職経験を「武器」に変える翻訳術
ここまで読んで、「やっぱり専門スキルが必要なのか…」と不安になった未経験の方、特に営業職の方!
心配ありません。
資材調達は、他職種のスキル(特に営業職)がめっちゃ活きやすい職種です。
重要なのは、あなたの経験を「調達担当者の言葉」に翻訳してアピールすることです。
アピール例①:営業職の経験 → 「交渉力・調整力」に翻訳
アピール例②:生産管理や製造現場の経験 → 「納期管理能力・製品知識」に翻訳
アピール例③:経理や財務の経験 → 「コスト分析力・計数感覚」に翻訳
ほら、あなたの経験、そのまま武器になると思いませんか?
まとめ
資材調達の仕事は、地味に見えて実はダイナミック。
会社の利益に直結し、経営感覚が磨かれる、非常にやりがいのある仕事だと私は思います。
必要なのは、「交渉力」や「調整力」といったソフトスキルと、「コスト分析力」や「PCスキル」といったハードスキルの両輪です。
資格は、そのスキル習得を助け、キャリアを加速させるブースターになります。
さて、この記事を読んで、あなたが次に何をすべきか、少しは見えてきたでしょうか?
まずは、今日からできる3ステップを試してみてください
- 【未経験の方】
あなたの今の仕事内容を、「調達の言葉(交渉力、調整力、分析力)」で書き直してみましょう。 - 【現役担当者の方】
まずは「日商簿記2級」か「ITパスポート」のテキストを開いてみるか、担当品目の購買データをExcelで分析してみませんか? - 【すべての方】
担当する業界(自動車、電機など)の専門紙を一つ、明日から購読してみてください。
情報の「質」が変わります。
スキルは一朝一夕には身につきません。でも、今日から意識を変え、小さな一歩を踏み出すだけで、あなたの市場価値は確実に上がっていきます。
あなたの調達キャリアが、実りあるものになることを心から応援しています!
