「資材調達部門に配属されたけど、英語って、ぶっちゃけ必須なのかな…?」
その不安、よく分かります。
何を隠そう、2000年初期に、私が初めて海外サプライヤーと対峙した時、その重要性を骨の髄まで痛感させられましたから。
手汗でぐっしょりになった手のひらの感覚は、今でも忘れられません。
この記事を最後まで読めば、あなたの英語に対する漠然としたモヤモヤは晴れ渡り、明日からの行動が明確になります。
この記事で得られること
・資材調達の現場で本当に求められる「リアルな」英語レベル
・今すぐ使える、そして絶対に注意すべき実践的な英語フレーズ
・挫折しない、あなたに合った英語学習の具体的なロードマップ
📢 結論をお伝えします
今後の資材調達担当者にとって、英語力は『必須スキル』です。
しかし、ネイティブのようにペラペラである必要は全くありません。本当に重要なのは「意図を伝える」こと。
絶望の淵で見た、英語力という一本の光

なぜ、そこまで私が「英語は必須だ」と言い切るのか。
それは、机上の空論ではなく、現場で何度も英語に助けられ、そして英語ができないことで涙をのむ同僚を見てきたからです。
私は重要部品を欧州メーカーから調達していました。
いつもは日本の商社が間に入ってくれていたので、正直、私は英語での直接交渉の経験が乏しかった。
その日、事件は起きました。
夜8時、製造現場からの鬼気迫る一本の電話。
「異物が混入している。当面はうちの方で選別するが、不良が多いのでおそらく足りない。至急代品の手配を」
血の気が引きました。
商社の担当者はもちろん営業時間外で、電話は繋がらない。万事休すか…?
頭が真っ白になりかけた、その時です。
ふと、サプライヤーの名刺が目に入りました。
そこには、技術担当者の直通番号が書かれていました。
震える手で国際電話をかけ、片言の英語で必死に状況を説明しました。
「This is Procuria from ABC Corporation in Japan! We have a serious problem with your parts!」
自信なんて全くありません。でも、やるしかなかった。
拙い英語でしたが、写真や図面をメールで送り、電話で状況を伝えると、相手も事の重大さを理解し、すぐに代品の手配と暫定対策にとりかかってくれました。
結果、生産ラインが完全に止まるという最悪の事態は、なんとか免れたのです。
この時、私は痛感しました。
いざという時、やっぱりサプライヤーと直接話をしなきゃいけない。そのためには語学力が重要なのだと。
冷や汗ものの、リアルなシーン別英語レベル

では、具体的にどのくらいの英語力が必要になるのでしょうか。
TOEICのスコアは一つの目安にはなりますが、それだけが全てではありません。
大切なのは「どの場面で、何ができるか」語学力が足りていなくても自分がどう動くか。
| 業務 シーン  | 主な業務内容 | 求められる 英語レベル(目安)  | ポイント | 
|---|---|---|---|
| 【初級編】 読み書き  | ・見積依頼(RFQ)の送付 ・注文書(PO)の発行 ・簡単な納期確認メール ・貿易事務  | TOEIC 400点~ | まずはここから。 定型文・テンプレートを使いこなせば十分対応可能です。 正確さが何より重要。  | 
| 【中級編】 会話  | ・サプライヤーとの定期Web会議 ・電話での簡単な質疑応答  | TOEIC 610点~ | 少し勇気がいる領域。 しかし、事前にアジェンダを共有し、話す内容を準備しておけば怖くありません。  | 
| 【上級編】 交渉・トラブル対応  | ・価格や納期のタフな交渉 ・品質問題の根本原因の追究 ・契約内容の詰め  | TOEIC 800点~ | 論理的に説明し、相手の意図を正確に汲み取る力が求められます。 ここまでくれば、市場価値の高い人材です。  | 
「上級レベルは、自分には無理かも…」と感じましたか?
大丈夫です。誰もが最初は初級レベルからスタートします。
大切なのは、今の自分のレベルを把握し、次のステップを目指すことです。
逆転劇を生む、魔法のフレーズ集

ここでは、私が現場で実際に使い、そして手痛い失敗をした「生きたフレーズ」を紹介します。
日本人は丁寧なメールを書きがちでが、何回かやりとりを重ねた慣れた相手には、用件だけを簡単に送り合うのが普通です。
魔法のフレーズ:これだけは覚えよう
見積もりを依頼する
Could you please provide us with a quote for the following items?
Can you quote for the following items? (慣れた相手)
(以下の品目の見積もりをいただけますでしょうか?)
納期を確認する
We would appreciate it if you could confirm the shipping date for our PO #12345.
Can you confirm the shipping date of our PO #12345. (慣れた相手)
(注文番号12345の出荷納期をご確認いただけますと幸いです。)
価格交渉を切り出す
Is there any possibility of a discount for a bulk order?
(大量発注の場合、値引きの可能性はありますでしょうか?)
実のところ、日常業務の7割は、こうした基本フレーズの組み合わせで乗り切れてしまうものです。
しかし、一方で便利なようで、使い方を間違えるととんでもない事態を招く「呪いのフレーズ」も存在します。
私の大失敗談:便利なようで危険な『as soon as possible』
あれは忘れもしない、ある重要部品の納期が迫っていた時。
サプライヤーから「as soon as possible(できるだけすぐ)に出荷する」とメールが来たので、私はすっかり安心しきっていました。
しかし、丸2日経っても何の連絡もない。
「どうなっているんだ?」と確認の電話を入れると、相手は少し怪訝な声で「今やっているよ」と一言。
その時、気づいたのです。
こちらの「ASAP(まあ、今日中には)」という期待感と、相手の「ASAP(まあ、2〜3日以内には)」という感覚に、天と地ほどの解釈のズレがあったことを…!
『ASAP』は絶対に信用するな。
必ず「by July 22nd(7月22日までに)」のように具体的な日時で確認・依頼すること。
これは、国境を越えて仕事をする上での鉄則です。
挫折しない、私だけの英語学習ロードマップ

「理屈は分かった。でも、結局何から始めればいいの?」
その気持ち、痛いほど分かります。だからこそ、私が20年間でたどり着いた、最も効果的で、そして何より「挫折しない」学習法をお伝えさせてください。
その前に、一つだけ。
完璧な英語なんて、目指さなくていい。
タフな交渉を救ったのは、たった一言の「雑談」でした。
中国のサプライヤーとの、難航が予想された価格交渉でのことです。
当時も(今も)私は英語が流暢とは到底言えず、会議室の空気は重く、緊張で喉はカラカラでした。
ふと、相手担当者のPCに、日本の有名アニメのステッカーが貼ってあるのが目に入りました。
勇気を振り絞って、「Do you like that anime? I love it too!」と話しかけてみたのです。
すると、彼の表情がパッと明るくなり、「本当か!どのキャラクターが好きなんだ?」と思いがけず話が弾みました。
その後の本題でも、どこか友好的な雰囲気で進み、結果的にこちらの事情を汲んだ、Win-Winの合意ができたのです。
この経験は、私にとって大きな転機でした。
完璧な文法や流暢な発音よりも、相手と繋がろうとするたった一言の勇気。 
それこそが、ビジネスの現場では何よりの武器になるのだと知りました。
あなたも、完璧を目指すあまり、一歩も踏み出せなくなってはいませんか?
大丈夫。今日からできる、小さな一歩から始めましょう。
Step 1:【基礎固め】まず「資材調達の英単語」を体に染み込ませる
難しい文法書を開く前に、まずは自分の仕事に直結する単語から覚えましょう。
- PO (Purchase Order)
 - RFQ (Request for Quotation)
 - Lead Time
 - MOQ (Minimum Order Quantity) …
 
これらの単語が分かるだけで、英文メールを読むストレスが驚くほど軽くなります。通勤中に、1日5個。それだけで十分です。
Step 2:【実践練習】AIと人間で、いいとこ取りの会話練習
「でも、いきなり外国人と話すのは緊張する…」
そんなあなたに、現代ならではの強力な味方がいます。AIを使った英会話学習アプリです。
相手はAIですから、何度聞き返しても、同じフレーズを100回練習しても、まったく気兼ねなくできます。
発音のチェックも非常に正確。まずはAI相手に基礎練習と度胸をつけて、自信の土台を作りましょう。
そして、少し自信がついたら、本番や対人のオンライン英会話で実践力を試すのです。
AIでは練習できない、予測不能な会話や、まさに先ほどお話しした「スモールトーク」を経験する。
この「AIで基礎練習 → 対人で実践」というハイブリッドな使い分けこそ、忙しいビジネスパーソンが最短で上達するコツだと、私は確信しています。
Step 3:【応用】あなたの「専門知識」を、世界で通用する武器に変える
最後は、あなたが既に持っている最大の資産を活かすステップ。
それは「資材調達の専門知識」です。
いつもあなたが書いている日本語のメールや報告書。それを、一度自分で英語に翻訳してみるのです
「この専門的なニュアンス、英語でどう表現すれば伝わるだろう?」
この試行錯誤こそが、あなたの英語を、単なる「コミュニケーションツール」から「交渉や問題解決のための武器」へと進化させます。
今すぐ始める!3つのアクションプラン
Step1: 
 この記事で紹介したフレーズの中から、たった一つでいいので声に出して読んでみる
Step2: 
 あなたのスマホに、評価の高いAI英会話アプリを一つインストールしてみる
Step3: 
 明日会社に行ったら、自分が過去に送った日本語のメールを一つ、英語に翻訳してみる
未来のあなたへ贈る、最後のエール

ここまで長い文章を読んでいただき、本当にありがとうございます。
あなたの英語に対する不安は、少しは期待に変わったでしょうか。
さあ、今日から行動を起こしましょう。
この小さな、本当に小さな一歩が、あなたの市場価値を高め、仕事の面白さを何倍にもし、そして5年後、10年後のあなたのキャリアを、今からは想像もつかないような場所に連れて行ってくれるはずです。
最後に、少しだけ未来の話を。
グローバル企業では、英語が話せるのはもはや「標準装備」。
そんな中で頭一つ抜け出すには、「英語プラスワン」、つまり第三言語を身につけるという選択肢があります。
担当地域の言葉を少しでも話せれば、相手との距離は劇的に縮まるでしょう。
もちろん、これはまだ先の話。
今は、目の前の一歩に集中すれば大丈夫です。
5年後、海外サプライヤーと冗談を交えながらタフな交渉をまとめ上げ、周りから頼りにされているあなたの姿を、私は心から応援しています。
さあ、新しい冒険を始めましょう!
